第19章 私が猫で、猫が私
「嫌いとは・・・風呂一つでずいぶん嫌われるな。心外だ」
決してそうは思っていないだろう表情を浮かべる光秀
「煩い、さっさと行け」
上座では信長が酒を飲みつつ、その様子を横目で見ながらそう言った
(行けじゃないっ!私(猫)もやだけど、私の身体だってどうなるのよっ!!)
「・・・湖、すまんな」
(鈴と入ると色々と困る・・・)
湯着を着せても、暴れる内に意味が無くなる
無頓着な鈴はお構いなしに湯を嫌がるし、その抵抗で引っかかれ叩かれ・・・
まるで、人型の猫そのものだ
終わる頃には、心労が募った
今回に至っては、中身の入れ替えもある
二人がそんな状態の鈴と湖に何かをする事はないだろうと踏んで、秀吉も止めはしなかった
騒がしい存在がどんどん離れていく
「・・・本当に大丈夫ですか」
家康が、そう零した
「心配なら貴様が行け、湖の身体なんぞ見慣れているだろう」
「・・・・・・」
確かに
ここに居る武将は皆見たことがある
猫から人に戻る際、湖は全裸だ
それは否定できなかった
はぁと、家康と秀吉のため息が重なった
一方、湯殿では・・・
「やだ、鈴、おふろ、きらい!」
湯に入る扉の前で、鈴がしゃがみ込んでいた
出口には、政宗が居てその場を出られない
「鈴、これを見ろ」
桶に湯をくんできた光秀が現れる
そして、水鉄砲を入れ誰も居ない場所に向かって撃つ
びゅーと、水が吹き出る様子に鈴(人)は驚いた
(水鉄砲って、こんな時代からあったんだ・・・)
湖(猫)は現状を忘れ感心してた
やがて、桶の水が無くなる頃
「・・・それ、たのしい?」
「楽しいぞ、だが、これだけの水ではすぐに終わってしまう。湯に浸かって遊べば、飽きるまで遊べるぞ」
「・・・・・・あそぶっ!」
きらきら目を輝かし、鈴(人)が頷く
(おぉ、偉いね!鈴!水鉄砲・・・って、ちょっと待って!!湯に入るって事はッ・・・)
はらりと落ちる着物
上をみれば、鈴(人)自身が着物を脱ぎ始めている