第19章 私が猫で、猫が私
秀吉にそう言われるが、匙を取ろうとしない鈴(人)
「鈴」
信長に声を掛けられても
「や、きらい」
と返す
「食ってみろ」
政宗に言われても、ちらっと器を見るだけで首を振る
そんな様子に気づき、湖(猫)が近づいてきた
そして、政宗の横に座る
鈴(人)の正面に座ったような形だ
『にゃぁ』
優しく鳴くが、鈴(人)は見ようとしない
『・・・なぁ』
今度は匙を咥えて、鈴(人)の膝に前足を乗せた
それでも、自分をみようとしない鈴(人)
匙をその膝に落とすと、尻尾をばんっ!!と畳に叩きつける
すると、びくっと肩を揺らし湖(猫)を見て・・・
「わかったぁ・・・」
と半泣きで答えた
「・・・湖には怒られたくないんだよな、鈴は」
苦笑しながら鈴(人)の頭を撫でる秀吉
政宗は吹き出して笑った
「母猫とそのこどもだな」
信長は、そう言って笑う
やがて、器から雑炊をすくって口に含むと・・・
鈴の表情が変わる
目がきらきらして、頬に赤みがさした
「っん?!んんっ、まさむね!おいしい!!すき、鈴、これ、おいしい!すき!」
「っおい、鈴!慌てないで食えっ、あ、こらっ・・ちゃんと冷ませ!」
勢いよく頬張る鈴(人)を見ると、湖は三成の方へ行く
そして、置かれた小鉢の雑炊を食べ始める
(味噌味ー!久しぶりっ)
「・・・湖、夕餉も作ってやるから色々食えよ」
政宗は湖の食べっぷりを見て満足そうな笑みを浮かべた
「そういえば・・・女中が零していたな」
「俺も、たぶん同じ事を聞きました」
政宗と家康がそう言い始めるが、食事に夢中な湖と鈴は気づかない
二人が耳に挟んだのは・・・
鈴を風呂に入れるのに苦労すること
一度、あまりに嫌がるので湖と入れたが、その際に湖を風呂に落とし、そこ以降湖も最小限しか風呂に入ろうとしないと
寝るのになかなか寝付かず、見回りの家臣達の休憩部屋に遊びにいっていること
などなど
城の生活に馴染んだと思っていれば、知らないところでそんな事が起っていた