第19章 私が猫で、猫が私
「まぁ、俺も早く気づいてやれば良かったな。いくら猫になっても、魚ばかりじゃ飽きるよな」
「悪かったな」と湖(猫)の頭を撫でると、雑炊ののった御盆を三成に渡す政宗
「?」
渡された三成は、「はて?」とそれを持つ
「小鉢に、湖の分取り分けて冷ましてやれ。残りは、お前の分だ。食え」
「ありがとうございます」
三成が小鉢に雑炊をわけ、箸でかき回しながらそれを冷ます
「で、お前はこれだ」
それを見て、政宗は鈴(人)の前に御盆を置く
鈴(人)は、秀吉の胡座の中に収まってそれを見ていた
そして、器が開くと・・・
あからさまに嫌そうな顔をする
「旨そうだな。何の雑炊だ?」
その匂いに秀吉が器の中を見る
「白身魚の雑炊だ。他に大根なんかの野菜も入れてある。三成の方は、鳥だ。味つけには味噌を使った」
(お米、お味噌、鶏肉っ!!匂いもすごいいいっ!!美味しそう!!)
尻尾を立てて振る湖(猫)に対して、鈴(人)は・・・
「やっ」
と顔を背ける
「・・・ふーふー・・・、そろそろいいでしょうか・・・湖様、どうぞ」
三成が、小鉢を湖(猫)に差し出す
湖(猫)は、小鉢に顔を突っ込むとパクパクと頬張るように食べ始める
それを見て信長は・・・
「秀吉、どうゆうことだ」
「すみません、すっかり抜けていました。鈴は、食事は取るんですが魚ばかりで、他は・・特に野菜を食べないんです。湖は、魚だけの食事だとあまり食べず、煮込んだ野菜や冷や飯をよく食べてたんですが・・・女中に伝え漏れていたようです」
「・・・なるほどな」
「そうだったんですね」
食に疎い三成は、そこには気づいていなかった
(これ、おいしい!)
湖が食べ終わると、三成は再度器によそって冷ます
「いっぱい食え、湖。多めに作ってあるから、遠慮する必要はない」
政宗が嬉しそうに、湖(猫)の頭を撫でた
リンリン
と湖(猫)の鈴飾りが音を立てた
「ほら、鈴も食え」