第19章 私が猫で、猫が私
「せっかく甘やかしてやろうと思ったのだがな」
(いいですっやな予感しかしません!)
「・・・そんな顔するな。取って食いはしない」
そう言うと、湖(猫)の飾り紐を解き、鈴(人)と同じデザインの飾り紐にかえる
その場を離れると、誰かの手が伸び身体を持たれる
そしてそのまま首を撫でられ、ゴロゴロと喉を鳴らす湖(猫)
(これ、気持ちいいんだよね・・・)
そして、その指についすり寄ってしまう
「家康様は、やはりお優しいですね。湖様、とても気持ちよさそうです」
三成の声がすると、はっと気づいたように指を止める家康
そして、湖(猫)も撫でていた正体を知り少し驚いた
(家康・・・?)
「・・・煩い、お前の口は、へらへら笑うだけじゃなくて、余計なことをおしゃべりする機能までついてるの?」
頬を少し染め、湖(猫)から手を離す家康
「いやですね、家康様。それ以外にも、ものを食べたり、飲んだりする役目もありますよ。あれ?そう言えば、今日はなにも食べてなかったかもしれません」
「お前の食生活については聞いていない・・」
家康がうんざりした顔を三成に向けるが、三成はその意図を理解していない
「ったく、そんな事だろうと思った」
襖が開き、政宗が皿を両手に入ってくる
「とりあえず、湖と鈴と三成にだ」
くんくん・・・
匂いを嗅げば、出汁の良い香りがする
「鈴、聞いたぞ。お前、魚しか食べてないんだろ?」
「・・・たべてる」
「嘘つけ」
ふいっと、政宗から顔を反らす鈴(人)
湖(猫)は逆に何だろう?と興味芯々で近づいていく
政宗がそんな湖(猫)に器を開けてみせれば、そこには雑炊が良い香りをたてている
(わぁ・・・!)
「して、湖は飯を食わないどころか口にしないって、女中達が嘆いていたぞ」
「湖様?」
(・・・その通り。城に入ってからのご飯が全部魚で飽きちゃったんだよね・・・そんなにおなかも空かないし・・・)
政宗の言葉に、三成が心配そうに見てきた