第19章 私が猫で、猫が私
家康から、鈴を受け取るとその身体を縦抱きで抱え歩き出す信長
すると、鈴から腹の虫の音が聞えた
「・・・鈴、腹が空いたか?」
政宗が聞けば、鈴(人)は「まさむね、ごはん」と言う
「任せろ」
にかっと笑えば政宗は、女中達とともに台所へ向かった
倒された木は、すぐに運び出され、荒れた庭も庭師によってすぐに直された
その日の夕方には、木の代わりにその場には椿の花が植えられる事になる
広間につくと信長は、鈴(人)を降ろす
「楽しんだか」
するりと、その頭を撫でれば
気持ちよさそうに目を細める鈴(人)
「ん・・・」
『にゃぉん』
同じく、三成に降ろされた湖(猫)が鈴(人)の元によってくる
鈴(人)はその身体を抱き上げる
(どこも怪我はなさそう・・・まったく、鈴だって解っていても・・・人の身体で動いているだけで、こんなに危なっかしく感じるなんて・・・)
湖(猫)は、鈴(人)の安堵に息を零した
「・・・湖?」
鈴(人)に短く返事をする
『にゃぉん』
「・・・鈴、悪い?」
(悪い?・・・あぁ、悪い子って言いたいのかな?)
湖(猫)の態度に不安を感じたのか、鈴(人)の表情が曇る
言葉には表せないので、湖(猫)はその鼻先をぺろんと舐めてやる
そうすれば、鈴(人)にはまた笑みが戻った
「鈴、髪を結ってやるから来い」
鈴(人)は光秀に手招きされ、湖(猫)を抱いたままそちらに向かった
そして、光秀の前にちょんと座れば、光秀は器用に鈴の髪を結っていく
(・・・光秀さん、やっぱり器用だよね・・・普通髪なんて結えないよね)
その様子を感心して見ていれば、鈴(人)の髪を結いながら光秀が、湖(猫)に問いかける
「なんだ。妬けたか?」
くくっと怪しい笑みを向ける
それにそっぽを向く湖(猫)
(光秀さん、絶対からかってる)
「それにしても、髪型一つで女性はこれほどに印象が変わるんですね・・・」