第19章 私が猫で、猫が私
「湖、お前は止めろ。鈴より、よっぽど不安だ」
政宗に言われ、『にゃっ!』と文句を言うように鳴けば・・・
「あんたみたいな鈍くさい猫に登られると、なおさら面倒だから止めといて」
そう庭に降りてきた家康に釘を刺される
(っひど・・・い!!私だって、十分この身体になじんだよ!!)
「湖様、皆さん心配されているんです。落ち着いて下さい。信長様も鈴様を危ない目には遭わされないはずです」
首根っこを捕まえられ、政宗から三成に渡される湖(猫)
三成の話を聞き、納得いかない顔をしつつも大人しくその腕に収まった
「御館様、お待たせいたしました」
そうこうしている内に、家臣が斧を持ってきた
「・・・貴様らは下がれ」
庭に降りた信長が、斧を振り上げる
ガッ!!ガンッ!!
下女や家臣が騒ぎ始める
それに鈴(人)も気がつき、下を見ようとすると木がぐらりと揺れる
「っにゃ!」
鈴(人)は、登っていた木の幹にしがみついた
何が起っているのかわからないけど、木が倒れそうなことは鈴(人)でも解る
慌てて幹の下をみれば、信長の姿
その時、何度目かの大きな音共に木が傾いた
「きゃぁ・・・!」
女中達の悲鳴が上がった
「っ!ん、なんっ!!」
(っ・・!)
湖はその様子を息を呑み見守る
鈴(人)は思わず幹に足を掛け飛ぶ
そして、くるんを身体を捻ると、着地の体勢を取る
だが、その足が庭の石に付く前に家康に受け止められた
ふわりと、スカートの裾が舞う
「にゃ?」
髪は、枝にひっかっかのかほどけ、その顔は見慣れた鈴の表情ではなく湖に見えた
「惜しかったな、こっちに落ちてくれば良かったのに・・・」
政宗が降ちてきた髪紐を手に舌打ちする
「あんた・・・」
家康は、鈴(人)の顔を見て何か言いたげにするがとどまった
(鈴に言っても仕方ない・・・)
ふぅと息を零し、眉間に皺が寄せる
鈴(人)はその様子を首を傾げてみていた
「鈴、追いかけっこは終いだ」