第19章 私が猫で、猫が私
「・・・なに」
信長の肩眉が上がる
「今、城内を捜索しておりますが・・・こちらには、来られていませんか?」
「鈴は来ておらん・・・だが、実に愉快だ。三成、皆に伝言しろ・・・」
【鈴姫を最初に見つけた者には褒美を与える】
信長の号令が瞬く間に城内に伝わった
仕事をしていた者たちも、手を休め一斉に姫捜しが始まる
だが、どんなに探しても姫の姿が見つからない
天井裏も、床下も
「いったい何処に隠れたんだ?」
誰もが、そう思い不安に感じはじめた頃
天主で眠っていた湖(猫)が起きた
なぜかざわつく城内をテトテト歩き、状況を飲み込む
(遊んでて隠れたままなの?)
驚いて縁側に座っていると、三成がそんな湖(猫)を見つけた
「湖様、申し訳ありません・・・城内からは出ていらっしゃらないのですが、何処に隠れられたのか見つけられずにいます。心当たりはありませんか?」
申し訳なさそうな三成に、湖(猫)はとりあえず探さなきゃと思考を巡らせる
(鈴が好きな場所・・・陽の当たった部屋、三成君の部屋に積まれた本の上、天主の屋根の上・・・屋根の上は、さすがに無理だよね・・・じゃあ・・・)
『にゃお!』
(ついてきて)
と言うように、三成を先導し走り始めた湖(猫)が向かったのは湖の部屋から見える庭先
(たぶん、ここ)
そこに生える一本の背の木
下から、それを見上げれば着物の切れ端が見える
『にゃ、にゃっ!』
湖が、呼ぶように鳴く
三成は、それを追うように上をみれば人の足が見えた
「・・・これは・・・湖様、後ろに下がってしばらくお待ち下さい」
そう言うと、枝に足を掛け登って行こうとする三成を秀吉が見つけた
「三成?!何やってるんだ・・・」
「あ。秀吉様」
三成の足を掛ける木の上をみれば、帯の端が見えた
「まさか・・・」
「見つけました。鈴様」