第19章 私が猫で、猫が私
「鈴、お前・・・ずいぶん話せるようになったな」
「鈴、すごい?」
「おぉ、すごい、すごい」
政宗が鈴(人)を膝にその頭を撫でる
鈴(人)は、湖(猫)を見ると、えへへと笑い、褒めて貰いたいという仕草を見せた
湖(猫)は、それに気づくと鈴(人)に飛び乗りその頬を舐めた
「湖、すき!」
鈴(人)は、満面の笑みを見せる
「鈴をここまで仕込むとは、三成大したものだな」
「いえ。鈴様がもともと賢いのですよ」
「いーや。お前の努力のたまものだ」
光秀が、三成を褒めた
そして、秀吉もその背をぽんぽんと叩く
「で、肝心の戻る気配はあるの?」
家康が、湖(猫)を見て聞くと湖(猫)は首をふるだけ
「そう」と短く返事を返す
「雷が原因と仮定すれば、またそれを待つしかあるまい。天候の左右はきかぬからな・・・気長に待て、湖」
『みゃぁ』
その日から、鈴姫と湖の城での暮らしが始まった
湖同様眠りの深い鈴を起こすのは、いつも顔なじみの女中
はじめは、瓜二つで湖であることを疑ったが、その表情や香り、仕草で全くの別人であると判断した
鈴も、いつもおやつを貰う女中であったため直ぐに懐く
ふらふら城内を歩いて回っては、彼女を見つけ「おやつ、ほしい」とおねだりをするのが日課だ
女中も最初こそ対応に戸惑ったが、まるで猫の鈴にしていたように「内緒ですよ」と良いながら鈴が好きだといった煮干しを渡す
家臣たちも、この童のような姫にいつしか慣れ
走っていたり、柵に立つ鈴をみれば駆け寄って心配するようになる
「まったく違うご姉妹だ」「鈴姫様は、まるで猫のように可愛らしい」と口にする
鈴(人)と湖(猫)は常に一緒に行動していた
ちりりん、ちりりん・・・となる鈴の音が何時しか合図になって二人を迎える人も増えていく