第19章 私が猫で、猫が私
「…湖ぃ・・」
声が聞えれば、光秀の肩に乗っていた猫がその胸元に降りる
すると猫を抱きしめて彼女は、にこにことその身体に頬をすりをした
「鈴、起きたか?」
「・・・みつひで?あさ?」
「そうだ。安土城についたぞ」
「あづちじょ?」
きょろきょろと、周りを見ればそこには見たことのある顔が数人
猫である鈴が散歩をしているときに、構ってくれる顔なじみもいる
それに気づくと、にっこりと笑って
「おはよ」
と、声を掛けた
「鈴だ。これからしばらく城に滞在する。湖とよく似ているが、混乱するなよ」
そうククッと三成が笑えば、彼らはびくりとした後、頬を染め頭を下げた
「「っ・・・鈴姫様、おはようございます」」
きょとんと首を傾げる鈴(人)
「ひめ?」
「そうだ。鈴姫」
光秀に繰り返され、ふーんと言えば・・・
その腕から降り、湖(猫)を両手で抱いて歩き出した
「ひめ、ひめ。鈴ひめ」
歌うように、にこにこと笑いながら進む鈴(人)
それを追って光秀も歩き出した
その場に残った家臣達は、口々に・・・
「幼い姫だ」「湖様と良く似ていらっしゃる」「光秀様を呼び捨てにしていた」
等、様々話を始めあっという間に城内に鈴姫の知らせが広まった
きょろきょろあたりを見回しながら、小走りする鈴(人)
それを時折尻尾で叩き止める湖(猫)
鈴には、人の姿で走り回る城が新鮮そのものだった
いつもより高い視界
いつもより少しだけ狭く感じる廊下
いつもより色鮮やかな世界
ふわふわとスカートを揺らし、鈴の音を立てながら、とたとたと音を立て進む
「のぶなが、いる?みつなり、いる?ひーよしは?」
「心配しなくても、全員集まっている。政宗も、家康もな」
「みーんな?」
「みーんな・・・だ」
わざと鈴(人)の口調を真似して答えれば、光秀の手に指を絡めてそれを引いた
「いこ」
待ちきれないという様子の鈴(人)に、苦笑し光秀は広間へ進んだ