第19章 私が猫で、猫が私
まずは、場内のものに湖の一時不在について周知をし、湖不在の期間の期間によっては代わりに妹姫を預かる事を伝える
これは、三成が無難にこなした
預かる姫の名も、姫の猫についても
すると、ご自分達の名前を猫につけるなんて、仲むつまじい姉妹のようだ
妹姫も湖姫のように可愛らしい姫だ
ご病気を抱えては居るが、健やかな姫のようだ
など、女中や家臣達の間で噂がたちだす
なお、秀吉の御殿へかくまわれた湖(猫)と鈴(人)は、三成が世話をし特に鈴(人)には色々と教え込んだ
準備は滞りない
ただし、一点
信長が、秀吉の御殿に上がり込むことについては秀吉は頑なに首を縦に振らなかった
結局、二人を予定していた三日後より早め、二日後に城に戻すことで、信長が折れ
安土城で普段同様に過ごすことになった
刻は早く過ぎ、明日城へ二人を戻すという夜のこと
秀吉の御殿では・・・
人払いしてある部屋の一角に灯が灯っている
「のぶながさま・・・です」
「のぶながっ」「にゃにゃっ」
「・・・お二人合わせてなら、「信長・様」に聞えますかね・・・」
シュッ・・・と、音を立て襖が開く
「どうだ?三成」
秀吉がお茶と菓子を持って訪れた
「お疲れ様です。秀吉様」
秀吉は襖を閉じ、その場にすわると茶を差し出す
三成には、茶を
鈴(人)には、水を
湖(猫)にも、背の低い器で水を
人になっても、猫は猫
味覚の好みは鈴のままで
飲み物は、水以外受け付けようとしなかった
食事も、魚のみ
野菜は、食べてみても嫌そうな顔を見せ
米は、口に運べばどうにか食べる
賢い鈴は、一通り生活に困らない動作はすんなり覚えてくれた
箸も器用に使うし、手で食事をするような事は無かった
相変わらず、飛んだり跳ねたり動きは童・・・猫のような部分は隠せないが、会釈をしたりすることも出来る
一点、上達しないのは言葉だった
ついつい出るのは「にゃあ」という猫の鳴き声のような言葉
どうにか、武将達の名前はつたなくも呼べるが、敬称が付かない
「みつなり、ごはん」
「みつなり、あそぼっ」
「やさい、やっ」
「これ、やっ」
こんな感じで、しゃべりたての童同様だ