第19章 私が猫で、猫が私
あたりを見回すように家康と信長の方へ顔を向ければ、着物について話を続けているようだ
(私の身体!!絶対、鈴が着替えなんて出来ないだろうし・・あんな状態の私を女中さん達に預ける事もできないだろうし・・・っ、って事は、光秀さんと政宗に・・・っ!!)
『にゃにゃっ!』
(絶対いやっ!!)
身を捩ろうが、バタバタしようが、三成は器用にその身体を抱え離さない
「湖様、爪・・・立てないで頂けると嬉しいです」
はっと気づけば、三成の手に数カ所のミミズ腫れ
「?!」
ぴたりと、動きを止めた湖(猫)
(ご、ごめん…三成くん…っ)
「それで…御館様、湖と鈴どうされますか?」
「何時戻るかも解りませんし・・・誰かの御殿に身を隠しますか?」
秀吉と家康が信長に尋ねる
「あんな面白いものを側に置かぬわけは無いだろう」
フッと、笑いを零す信長の言葉を予測していた二人はため息をこぼした
ただ三成は、何かを策を考えるように話し出した
「・・・しかし、このまま城に置けば湖様の異変には直ぐに気づかれるでしょうね」
「いかにも」
「・・・では、数日の間は秀吉様の御殿にお二人を隠しましょう。そして、その後城に戻します」
秀吉が三成に説明を求める
「どうするつもりだ?三成」
「一度湖様は国に戻ったという事にしていただきます。代わりに、湖様の・・・妹君が遊びに来られたことにしてはいかがですか?鈴姫様とその猫の湖様」
「・・・妹なのに瓜二つ・・・その上、猫まで同じ顔だぞ・・・」
秀吉の言葉に三成は頷き、その後言葉を続けた
「よく似た姉妹は、いらっしゃいます。それに、鈴様と湖様の表情は異なりますし・・・先ほど、気づいたのですが・・・香りも異なります」
(香り?)
三成が湖(猫)を持ち上げ、その背に顔を近づける
「・・・昨日感じた違和感、どうやらこれのようです」
「貸せ」
黙って聞いていた信長が片手を差し出す
三成が近づき湖(猫)を手渡すと、その身に鼻を近づけた