第19章 私が猫で、猫が私
ぶつ・・・っ
湖(猫)本人は叩いたつもりだったのだ
だが、それとは異なる音がした
そんな小さな音に、光秀が眉をしかめる
「あ・・・」
同時に三成が声を上げた
湖(猫)は、と言えば・・・
(あれ、なんか・・・指先がむずむずする・・・なんだろ?これ・・)
そう思い手をそこから除けて確認すれば、小さな爪が出ていた
(あ。これか。そっか、猫だから爪・・・)
「やられたな、光秀」
くっと笑う信長の方を向き、再度近くの足をみれば
小さな爪痕がくっきりと残っている
『・・・みゃっ』
(あ・・・しまった・・・)
「・・・ほぅ、そうか・・・そんなに、俺に着替えさせて欲しいか」
下を見下ろす武将の怖い事
笑っているのに、すごい威圧感を感じ、猫の毛が逆立つ
「俺も参加するぞ。いい着物がある」
「・・・まさか、あれを着させるつもりか」
『にゃん?』
湖(猫)が首を傾げる
政宗が片膝を立てて立ち上がるのを、秀吉が止めるように言った
「どのみち湖に持ち帰ったんだ。丁度だろう」
「政宗さん、嫌な予感しかしませんが・・・」
ようやく笑いが治まったのか、家康が声を掛けた
「まぁ・・・楽しみにしてろ。なぁ鈴」
「にゃぁ」
『にゃにゃっ!』
「三成、湖を見とけ」
「はい」
政宗が、そう言えば三成に抱きかかえられる湖(猫)
『にゃ、にゃ』
爪を立てないように気をつけながら、そこから出ようとする湖(猫)の前足を摘まむと、政宗たちに向かって手を振るように揺らす三成
「湖様、一緒に行かれてもどうされることも出来ないと思いますよ。こちらで、ゆるりと待っておりましょう」
「・・・湖、先に断っておく。俺は、あの着物を着せるのは止めろと止めた」
はぁーと、深いため息を付いた秀吉
「いったいどんな着物を用意したんです?政宗さんは・・」
「昨夜の説明では、異国の着物だと言っていたな・・・漢服・・・と言ったな」
(かんふく??・・・アジアっぽい名前だけど、どこの国の服だろう・・・いずれにせよ、政宗が選んだ服・・・嫌な予感がする・・・)
湖(猫)が見るのは、政宗達の消えた方向
結局鈴(人)を連れ出て行ってしまった