第19章 私が猫で、猫が私
鈴(猫)はにこにこと笑い三成を指さす
「みぃつ、な」
「っ・・・」
舌っ足らずな発音だが、確かに三成と呼んでいるように聞えた
「すごいな・・」
黙って見守っていた秀吉が驚きの声を上げる
すると、秀吉の方を指さし
「ひぃよ・・し」
そして・・・
「いぃやす、のーにゃにゃ、まーにゃ、みぃで」
と次々に指さし答えた
「なんだ、その間抜けな名は」
信長が、第一声を上げたが
それは驚きの言葉ではなく、自分の呼ばれ方についてだ
「信長だ」
「のーにゃにゃ」
「違う。のぶなが」
「のーにゃっにゃっ!」
っぶ・・
家康が、口を覆い後ろを向いた
「・・・なんだ。家康」
「っ・・別に・・・」
だがふるふると肩が揺れる家康
どうやら、酷く笑いの壺に入ったらしい
「くはっ・・・く、くくっ・・・」
そしてもう一人、政宗もまた笑いを零す
こちらは隠そうともせずに
「・・っ政宗、御館、様に、ぐっ、、しつれ・・いだぞ・・・っ」
反対にこちらは、笑いを耐えるのに必死だ
「猿・・・貴様・・」
信長といえば、真剣そのもの
鈴(人)にどうにか正しい発音をさせようとするのだ
「信長様、まぁ・・・童のようなものだと思えば・・・これは、これでよろしいと思いますが」
「機能としては、湖と同等だ。正しく発音出来るはずだ」
そう信長は言う
鈴(人)は飽きたかのように四つん這いで、目が合った光秀の方に向かった
そして鈴(人)は、その光秀の膝に座り込むと足を伸ばしてぱたぱたと動かし遊び出す
湖(猫)は、そんな鈴(人)の動作にいちいちドキドキしてしまう
(これ、事情を知らない人に見られたくないっ。なんで、こんな事に・・・)
悶々と考え込む湖(猫)を余所に、光秀が鈴(人)を担ぐように持ち上げた
「とりあえず着替えだな」
「みゃぁ?」
『にゃっ?!』
がばりと、顔を上げ慌てたように光秀の裾を引く湖(猫)
「待て。光秀。着替えさせるって・・・お前、鈴をどうする気だ」
「着替えさせるだけ・・・だが、何か問題があるか?」
ククッと意地悪な笑みを浮かべる光秀を、下から見ていた湖(猫)は、光秀の足を前足で叩いた