第19章 私が猫で、猫が私
「湖、煩い。鈴は一旦手を離して」
いつの間にか、秀吉と湖を挟むような位置にたった家康は、秀吉の頭を抱きしめていた湖の手を外し、後ろからその寝衣を合わせ身を整えた
「っ・・・勘弁してくれ・・」
どっと疲れた顔を見せ尻をつく秀吉の頬はどことなく薄赤い
「にゃ?にゃ?」
後ろから、寝衣を直されている湖は首を回し家康を見た
「鈴、前見てて」
家康は、鈴の頭を鷲掴みにすると強制的に前に向かせため息を零す
薄ら染まった頬を誰にも気づかれないよう、一時心を落ち着けようとした
再び顔を上げれば、そこにはまた自分の方へ振り向く鈴の・・・湖の顔があって
「・・・っ鈴」
あまりに間近な位置にいたことに身を引くことも忘れていれば、
その唇を鈴がぺろんと舐める
「っ・・・!!」
ぐいっと、その肩に手を乗せ腕が伸びる限りその身を引き離す家康
「・・三成・・・鈴が一番懐いてるのはお前だろ。これ、どうにかしろ・・・」
「え・・・はぁ・・」
三成らしくない切れの悪い返事
家康は、三成から猫を引き取ると、人を三成に押しやる
「・・・ひとまず信長様のもとへ参りましょうか・・・鈴様」
にこりと、鈴に向けて微笑む三成
その三成に鈴は、がばりと抱きつく
予想していた三成は、それを受け止め立ち上がった
鈴は心地よさそうに三成に抱かれている
湖は先ほどから目の前で繰り広げられる光景
自分が武将達に絡む姿を目にし、顔も上げられないで居た
(ひ、非常に・・恥ずかしいんですけどっ・・)
家康もまた、鈴の体を片手に抱きその場から起き上がると
ふぅ・・・と息を零す
そして、じろりと鈴を見下ろし・・・
「あんた、元に戻ったら覚えてなよ」
と、不機嫌な声色で小さく言った
『ひ・・にゃ・・』