第19章 私が猫で、猫が私
「・・・湖と鈴?」
「・・・ありがとうございます。湖様を起こしには、私が行きますので大丈夫です」
笑みを浮かべ女中に伝えれば、彼女は頬を染めその場を下がった
「三成、今のは聞き間違いか?」
「・・・ひとまず湖様の部屋に行ってみましょう」
早足で移動する二人に、ちょうど城へ入った家康も気づく
「なんですか?」
「家康、お前も来い」
秀吉に腕を引かれ、半ば強引に連れてこられた家康
「湖、入るぞ」
秀吉は声を掛け、襖を引く
そして三人が入ると、三成がその襖を閉めた
「いったい何ですか?」
家康が、秀吉に声をかけるが秀吉からの返答は無い
横にいる三成からも
なんだ?と思い、二人と同じ方を見ると
そこには小さな寝息をたて眠る湖の姿があった
「湖、まだ寝て・・」
ため息を付き呆れていると、その湖の奧に煤色の尻尾が動くのが目に入った
「え・・・」
足を縮め身体を丸める湖の横に、今起きたのか身体を伸ばし頭をふる鈴の姿がある
鈴が頭をふれば、リンリン・・・と鈴の音がなる
「鈴様」
三成が、声を掛けるが鈴はまだ覚醒していないのか眠そうに動き、また丸まろうとしていた
だが、前足でタシタシと褥を踏んだところで、思わぬ反応を見せる
目を見開いて、その場に固まっているのだ
湖の頬をゆっくりと前足で触れる鈴
グレーの綺麗な毛並み、ピンクの肉球
その前足で触っているのは、一向に起きない女の顔
ぷに・・ふみ・・・
つんつん、と前足で押すが、押された人物はすーすーと寝息を立てているだけ
『にゃ・・にゃ、みゃぁ』
「湖様・・・ですか」
眠り続ける湖の奧から聞き覚えのある声が聞えた
見上げれば、そこには見知った顔
秀吉と三成、それに家康がいる
猫は、三成の問いに答えるように
首を縦に振って肯定を示した
『にゃぁっ』
「やはり、湖様ですよね」
三成は、それを見ると湖の・・・鈴の姿をした湖の方へと向かってきた