第19章 私が猫で、猫が私
その夜、宴会が行われたがその場に湖の姿は無かった
昼間のあれからずっと眠ったまま
もともと眠りが深いと認識していた武将達も、既に半日は眠ったまま起きてこない湖の様子が気になり始める
宴会が終わりとなったのは、深夜
皆、各自の場所へと戻った頃
信長の部屋で、続いていた小さな宴会での話題は湖だった
「いくら何でも長くないか?」
政宗がそう言えば、家康が杯から口を離し
「・・・朝になったら、普通に起きますよ。別に体調が悪かったわけでもないんだから・・」
そう言う家康に相づちを打ちながらも、三成は表情を曇らせる
「・・・そうですね」
そんな三成の様子に気づき、秀吉は声を掛けた
「どうかしたか?三成」
「あ、いえ・・・少々違和感が」
「・・・違和感?」
信長が杯を片手に、三成を見た
「お前にしてははっきりしないな、三成」
「そうですね。ですが、はっきり解らないのです。湖様を部屋にお連れした際に、何か違和感を感じたのですが・・・」
光秀に言われ苦笑する三成
信長は何か引っかかるような顔を見せていた
その違和感は、翌日になってはっきりとした
戦国時代の朝は早い
日の出と共に起き、身支度を調えると朝餉を取り仕事が始まる
それは、昨夜宴会に参加していた者も同様
そして、湖の部屋には毎朝声を掛けに来る馴染みの女中が来ていた
「湖様、失礼いたします。そろそろ・・・あら、まぁ・・」
女中はクスリと笑みを漏らす
「まるで姉妹のようですね・・もう少し眠られますか?」
湖の背中を、ぽんぽんと叩く
すると「ん」と短い声だけが聞えた
クスクスと、笑みを漏らしながら下がる女中
襖を閉めると、その足を秀吉がいるであろう場所へと向けた
「なんだと?まだ起きない?」
秀吉が、報告をうけ眉を潜める
隣にいた三成も眼鏡を外し、女中の話を聞いた
「もう1日ほど寝ているだろ?あいつは、どれだけ寝るつもりだ?」
「・・・起こした時の反応はどうでしたか?」
三成の問いに、女中が笑みを漏らした
「それが・・湖様と鈴ちゃんが同じような格好で寝ているんです。あまりに可愛らしくて、起こすのがもったいないかと思ってしまいましたが・・・やはり起こしましょうか?」