第19章 私が猫で、猫が私
昨夜、安土城では政宗と秀吉の討伐成功を祝って宴が開かれていた
参加しているのは、いつも馴染みの武将以外にも、城中の家臣、御殿にいるもの、ほとんどの者が参加した大宴会だった
それより、少しさかのぼり
政宗と秀吉の帰還直前のこと
「なんとか、もったか」
「あぁ、あいつらも御殿に入った頃だろう」
政宗が言った「あいつら」とは、共に討伐に出ていた家臣達だ
秀吉が見上げた先には、黒い雲とその間を縫うように光る雷がある
やがて、
ぽつ・・・ぽつ、ぽつ、ぽつ・・・
「お、降り始めたか」
政宗がそう言うと同時に、ザーザーとバケツを返したような大雨が降り始め、雷が鳴り始めた
「秀吉さん、政宗、お帰り・・・」
ドォオオオンッ・・・ッ!!
城に入った直前、入り口で待っていた湖はその場にしゃがみ込んだ
「湖っ大丈夫だ」
「近くに落ちたか?」
ひときわ激しい雷が落ちる音に、驚いた湖は駆け寄ってきた秀吉に背を撫でられながら
「び、、くりした・・・」
と呟いた
「中に行くぞ、雨が吹込みそうだ」
そして、政宗に声を掛けられ出迎えもままならないまま広間へと向かった
広間に付けば、そこには信長を始め皆が待っていた
二人は、報告を行う
湖は、それを三成の横で聞いていたが、次第に眠気が襲ってくる
(眠い・・・まだ昼なのに暗いから・・・?)
手の甲で目を擦ると、横にいた三成がそれに気づき湖に声を掛ける
「湖様?部屋に戻られますか?」
「ううん・・二人に「おかえりなさい」って言ってから・・」
まぶたは落ちかけ、もう眠る直前の様子の湖に他の武将も気づく
「・・・あんた、昨日寝てないの?」
反対隣の家康は、ため息をつきつつその様子を見ている
「寝た・・・いっぱい・・、なんか・・・すごく・・」
そう言いながら、コトンと三成に傾くように眠りに落ちた湖
信長は「部屋に連れて行け」と三成に言い、秀吉と政宗の話の続きを聞きにはいった
そして、湖を部屋に置き寝かせると三成は少し違和感を感じた
(・・・なんでしょう?何か、違和感が・・・)
ただその違和感が何かは解らない
外を見れば、先ほどまでどす黒雲だけでだったが、その間に青空が覗いていた