第18章 秘密の抜け道(裏:謙信、信長)
湖は、贅沢をしようとはしない
普段は町娘と変わらないような着物で過ごしている
建前の立場で、湖を呼ぶ場合にはそれなりに見える着物を着させる
その中に、このような着物はあっただろうか・・・
あったとして、わざわざ遠出するのに着るはずはなく・・・
馬に乗っていったとすれば、いつものように袴を着ているはずだと
信長は思考を巡らせ結果に至ると、羽織を外し帯に手を掛ける
すると、湖が身じろぎしながら名前を呼んだ
「・・け、んしん・・・さま・・・」
帯に掛かった手が止まる
(・・・上杉だと・・)
それを耳に入れると、信長はそっと外していた帯をぐっと強く引き解いた
すると当然ように湖の身体は強く引っ張られるように動き、その急な刺激に湖は目を覚ました
「っ・・・?!」
(痛いっ・・・)
ぱっちりと目を開くと、そこには信長の顔がある
「の、のぶなが・・・さま??」
何が何だかという表情の湖が周りを見渡す
そして、そこが天主で、自分が信長に抱えられていること、なぜか信長が不機嫌な顔をしていることを把握すると・・・
「あの・・・私、寝ちゃってましたか・・・」
「・・・」
眉間に皺を寄せたまま何も答えない信長に、湖は距離を置きたくなる
だが、抱えられている状態でそれは敵わず
「の、ぶなが・・さま・・・あの・・・」
「脱げ」
(ん?・・・ぬぐ??)
「すぐに脱げ」
「あの・・・何を・・・?!」
信長の片腕を見れば、そこには見覚えのある帯柄があった
(まさか・・・)
湖は自分を見下ろす
緩められ、帯は膝ほどに落ちている
そしてその端を持っているのは信長だ
「なっ・・何をしてるんですか?!」
慌てて膝まで落ちた帯に手を掛け押さえる湖
湖の態度には表情を変えない信長
「貴様、耳は付いているだろう・・・さっさと脱げと言っている」
「い、嫌ですよ!どうして脱がなきゃいけないんですか?!」
ぎゅうと自分の身を守るように抱える湖
だが、信長にはそれは着物を守っているようにしか見えなかった
「・・・ならば、俺が脱がしてやろう・・・」