第18章 秘密の抜け道(裏:謙信、信長)
■信長 選択
【独占欲】
天主へと湖を抱えたままで戻った信長は、そのまま湖を膝に乗せ腰を置く
胸元に寄りかかるように眠る湖の顔に掛かった髪を解き、耳へと掛けてやれば・・・
「ん・・・」
小さな声を漏らす
「信長様、湖の足を」
少し遅れ、部屋に入ってきた家康が、信長に抱えられたままの湖の足を診察する
巻かれていた包帯を外し、その部位を確認すれば、薬とともに新しい包帯を巻いていく
「・・・捻挫ですね。二、三週間で腫れも引くはずです」
手桶で手を洗いながら、家康が言った
「そうか・・・これを持って行け」
そう言い懐から出したのは、しんたの持ってきた薬草
「これは・・・?どうしたんですか?」
「湖の・・・弟子からだ」
「弟子?・・・湖は、何をやってたんですか」
はぁとため息を零す家康に、信長はふっと表情を緩めた
「いつものことだ」
ぴちゃんと、水滴が手桶に落ちる音がした
明日の朝、また来ます
そういい家康は部屋から出て行った
ぐっすり眠る湖を見ながら、用意されてた酒を口に含む
すると、湖が身を縮めるように足を縮めた
(・・・寒いか・・・)
この所、夜はすっかり涼しくなっていた
自分の羽織を掛けてやれば、心地よさそうにすり寄ってくる
程なくして秀吉が、部屋に来たが
湖がその場に眠っていることもあり、小言を言いたそうな顔をしながらさほど時間を掛けずに出て行ったと
「くく・・連れてきて正解だな」
先ほど迎えに出てきていた秀吉の顔には、言いたいことが多々ありそうな表情を見せていた
だが、今宵はそれを聞く気分ではない
久しぶりに感じた童の遊び心
それと共に、予感が当たり上杉と共に湖がいると知ったときの心の靄
あの少年に会って話を聞き、明らかにそれまでの遊び心とは違う物が沸き出た
「あの小僧への褒美は・・・湖に考えさせるか・・・」
湖を見れば、自分の羽織の下に隠れている着物の色が目に付く
(・・・この着物)