第18章 秘密の抜け道(裏:謙信、信長)
腕の中で恐縮する湖を確認し、信長は謙信達に向き直った
「今回は、湖に免じて逃がしてやろう」
そう言い捨てると、自分の乗ってきた馬の方へ歩き出す
湖は抱えられ、信長より高い位置にある顔を謙信達の方へ向ける
複雑そうに笑い謙信、信玄たちを見ていた
こちらへ人の気配が近づきつつある
謙信達は、森に消えていった
四人の姿が完全に見えなくなると、信長に抱えられていた湖は、背を丸め息をつく
「貴様・・・」
何か言いたげな信長の視線に気づくと、再び背筋をしゃんと伸ばし湖は答える
「あ。足は捻挫です。二週間くらいで治るって、佐助くんが言ってくれました」
(早く治って二週間って言ってたよね・・・じっとして早く直さなきゃ・・・っ)
あと・・・と、続けて湖が話す
「勝手に遠出してすみません」
無言のまま視線を外されず、湖は言葉に詰まる
(えっと~~あと何か・・・やったっけ・・・)
そのままため息を付かれると、ぎくりと固まる湖
「場所を伝えてから出歩け。何も言わぬままに居なくなれば、政宗が仕事にならん」
(え・・・)
「解らんか・・・好きに出歩けと、言ったんだ」
少し間を取って、付け足す信長
「帰る場所くらい理解してるな」
「っ・・・はい」
別に、今まで窮屈を感じたことはない
そう感じたことは無いが、信用されていないような寂しさは感じていた
それが、今
好きに出歩けと、言われただけで、するっとその寂しさが無くなる
ガサガサ・・・
音を立てて、光秀が姿を現した
「そろそろよろしいですか、御館様」
「湖様のお迎えにこのような格好を?」
鎧を着けた光秀と三成
光秀は、事情をすべて知っているが
書庫で書物を読みふけっていた三成は、何も聞かされることなく
言われるがままに用意をし、ここにたどり着いた
また茂みの後ろには、歩兵も数人控えている
ただし、刀などの武器は持たず、代わりに城からの米やら野菜をひいている
「帰るぞ、それらは途中の村に置いて行け。ここ数週間、雨が降らず貧していると出先に秀吉から報告があった」
「はっ」
歩兵は、荷車を引いて村へと向かう