第18章 秘密の抜け道(裏:謙信、信長)
「天女にまで、殺気を向ける必要はないだろう」
信玄が、謙信の馬の前に移動する
「湖に向けた覚えはない。湖からお前達が離れれば良い」
湖からは、信長の姿は見えない
見えているのは信玄の背中だけ
(だめ、ちゃんと私が言わなきゃ・・・っこの姿だけ見たら、誤解されて当然だよ。謙信さま、信玄さまたちとは、今日偶然会ったんだって・・・勝手に城を抜けてきたことも・・)
「の、信長さまっ・・・」
「湖・・・」
謙信に囲われ、信玄が壁になり、信長からも湖の姿は見えないが、今度ははっきり声が聞えた
「勝手に城を出て、こんな所まで来てたのは・・・っ、さっきの男の子に馬の扱いを教えに来ていただけです!信玄さまや、謙信さまとは今日偶然会って・・・っ、私が怪我しそうになったところを助けて貰っただけなんです!!」
はぁー、はぁーと、息を付き
一気に言いたいことを信長に向けて話せば、「知っている」と、普段湖と話をする時と変わらない声が聞えた
(え・・?)
「小僧から聞いて、だいたいは把握した。鬼ごっこは終わりだ。もどれ、湖」
城で話している時のような、時折聞く柔らかな声色
湖は、信玄の背中で見えない信長の方を向いた
「黙れ、だれが遊びだと言った?」
湖を馬から下ろすそぶりの見せない謙信は、信玄の肩越しに信長を見据える
「・・・貴様は、ずいぶん湖に執着しているようだな。だが、それは俺の物だ」
「おいおい、天女は物じゃ無いぞ。それに、姫はただの肩書きだろう。湖は、自由だ」
「それは、貴様が決めることでは無い」
ちゃ、かちゃ・・ちゃき・・・っ
武器に手の掛かる音が聞える
(っ・・だめ、一対四体だなんて・・・信長さまが・・・!!)
「や、やめてくださいっ!」
「悪いな、湖。少し待ってってくれ」
「っ、信玄さま!」
後ろにいる謙信の表情を見ても、一切止まる気配は感じられない
(だめだって・・・っ・・)
「っ、湖・・!」
謙信の声に、全員が湖の様子を伺った