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【イケメン戦国】私と猫と

第18章 秘密の抜け道(裏:謙信、信長)


湖が聞き、少年が答えるのと同時にガサガサと草木の揺れる音がした

「違うよ。兄ちゃんと。俺、姉ちゃん探してて。そしたら、たまたま姉ちゃん探している兄ちゃんに会ったんだ。だから一緒に探して此処まで来たんだ!スッゲー強い兄ちゃんでさ…」

しんたと湖を除いた四人は、それぞれ武器に手を掛けその姿が現れるのを待っていた

「・・・お兄ちゃん?」

思い当たる人物の居ない湖は、首を傾げてしんたを見た

「うん。のぶながって言ってた。安土のお殿様とおんなじ名前だな」

少年の声と同時に姿が見えたのは、黒い着物の人物
片方の腕を懐に入れ、片手で馬を操る、不敵な笑みの信長だった

「あ、兄ちゃん。おっせーよ!俺の勝ちな!」
「あぁ。貴様には、あとで褒美をくれてやる」

空気が変わる
鋭く刺すような空気

こどもでもそれを感じたのか、しんたが心配そうに湖を見た
湖は、「心配無いよ」と言うと少年に家に帰るように言い聞かせる
一瞬暗い顔をした少年だが、湖に「またね!」と声を掛けると、心配そうにしながらもその場を引き返していった

「あの子を送らなくていいのかい?」
「心配せずとも、この辺のことはあの小僧の方が詳しい。周辺の手荒い輩は、ここにくるついでに掃除してやった。なんの問題もなかろう」

信玄の問いかけに、信長が笑いながら答える

「鬼ごっこ・・・見つかりましたね」

佐助の言葉に、信長が眉を揺らす

「ふっ・・・、俺を鬼に回して逃げ切れると思ったか」

ぎらりと光るような瞳に、湖は身を固めた

(・・・いつもの信長さまとは違う・・・戦に出ている時のよう・・・)

「して、湖。何か、言うことはあるか?」

いつもより、冷たい
突き放すような声色

「っ!」

口を開けて、答えようとするものの
この場の空気に圧迫されたように、声が出ない
代わりに、寒気と汗とどうしようもない身の震えが襲う

「湖、息を吸え」

謙信が、それに気づき前に座る湖の顎に手を掛けた
顎を上に向けられ、その時にはじめて息が止まっていた事に気づいた湖は、言われるがまま息を吸う

ひゅっ・・と、冷たい空気が気管に入れば、頬に涙が伝った
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