第18章 秘密の抜け道(裏:謙信、信長)
信玄は、それを微笑ましく思う
(いい女には深入りしないようにしないとな・・・謙信に預けておけばいい・・)
森に着き少し入ったところで、謙信と信玄が最初に気づき後ろを振り向いた
「・・・追ってきたか・・・」
四人の表情が変わり、自分たちの入ってきた方角に馬をむき直す
耳を済ませば、湖にも聞こえた
馬の蹄の音
一頭ではない
二頭、三頭ほどの音が五人の方へと向かってきている
「信玄様、謙信様。下がって下さい・・」
幸村と佐助が、前に出てそれを待った
すると・・・一頭が、森の影から姿を現す
ざっと、その場の空気が変わった
だが・・・
「あ、お兄ちゃん達!やっぱりこっちに居た!!」
聞き覚えのある声に、湖は頭に覆っていた羽織を取る
「っ・・・しんた?!」
「あ、お姉ちゃんも!良かった!俺、探してたんだ。さっき、怪我してないっていってたけど、足引きずってるのちらっと見えて・・・俺、薬草取ってきて、お姉ちゃんに渡そうと思って探してたんだ!」
しんたが、馬に乗ったままこちらへと向かってきた
そして、薬草を湖に手渡す
「これ・・・」
「これは、捻挫に効く薬草だよ。湖さん」
しんたから渡された薬草を見た佐助が教えてくれる
「へへ・・・」
頭に手を当て、照れ隠しのような動作をする少年
「姉ちゃん、きっと俺のかーちゃんたちに心配させたくないんだろうな、っ思って…俺、薬草を探してすぐに追いかけて来たんだ!」
湖は、驚きの表情を浮かべたが、すぐに柔らかい笑みを浮かべた
そして、バランスを崩さない程度に少年の身体を引き、ぽんぽんと抱きしめた
「もうこんなに一人で馬に乗れちゃうんだね。しんた君、すごいねっ!薬草も、ありがとう。嬉しいよ」
額を軽く合わせれば、その子はひひっといい顔をして微笑む
それを見ていた謙信が、ひとつため息を零すと、湖は姿勢を正し謙信の方へと身を寄せた
「・・・君、一人で此処まで来たのかい?」
信玄が、いまだ自分たちの入ってきた方向を向いたまま少年に聞く
「違うよ」
「・・・じゃあ、お父さんと?」