第18章 秘密の抜け道(裏:謙信、信長)
「その「たまたま」が重なって、今だろう」
信玄の言葉に、湖の顔から血の気が引けた
「あのっ私、すぐに帰ります!!」
「その足で馬に乗れるのか」
上から聞える謙信の声
「っでも・・」
「落ち着きなさい、湖。大丈夫だ。これは・・・言わば鬼ごっこのようなものだ。見つからなければ勝ちだ」
「なるほど・・・さすがは信玄様。鬼ごっことは・・・確かにそうですね」
信玄の言葉に、佐助がふむと感心してみせた
(鬼ごっこって・・・そんな悠長な・・・光秀さんと三成君が来てるのに・・・)
「・・・青鬼と赤鬼なら、どっちが赤だろう?」
「・・・え・・??」
焦っている湖の耳に入ってきたのは、佐助のつぶやき
(青鬼と赤鬼・・・)
思わず想像してしまった
光秀と三成に、角が生えて、赤い羽織と青い羽織を着ている姿を
光秀は様になるが、三成がその姿をしてもどうやっても鬼に見えない
似合いそうなのは、政宗とか信長とか・・・
そんな事を考えていると、思わず湖の肩が揺れた
「っぷ・・・」
クスクスと、笑いを堪える湖に幸村が「な、なんだ??」と驚く
「どうしたの?湖さん」
「だってっ~~・・・佐助くんが、へんなこというからっ・・・クスクス・・」
すると、湖を囲っている謙信の口元に柔らかい笑みが浮かんだ
信玄はそれを見て、ふっと微笑んだ
「鬼ごっこだとすれば、こちらは捕まる側だろう?だとすれば、向かってきている鬼は、明智光秀さんと、石田三成さん。どっちが、赤でどっちが青だろうか?湖さん」
「っ~~、佐助くん・・・っ、どっちって・・・どうして鬼ごっこの鬼が、赤と青なの・・・っ、それじゃ節分みたいだよっ・・・」
謙信の前で、馬にのっている湖は、あまりにおかしく
いつのまにか、謙信に体重を預けすっかり支えられていた
「あ。そうか、それは節分か」
自分の横で馬を走らせる佐助とのたわいない会話
先ほど、自分と二人でいた際に最後に見せたのは泣き顔
泣き顔より・・・
「笑っていろ。お前はその方がいい」
馬を走らせたまま、前を見たままで謙信が言った
「っ・・・」
その言葉に、こくりと頷く湖