第18章 秘密の抜け道(裏:謙信、信長)
「・・・抜け道か。十分、活用できる」
ふんと、鼻をならすような笑みを浮かべ
手についた植物を払えば、そこには同様に誰かがそれを払った形跡があった
「・・・ほとほと飽きない娘だ」
そのまま湖の経路をたどるように向かえば、厩舎があった
ここから馬に乗って出ていることは、そこにいた世話係に確認が取れた
同じく馬に乗り、湖の出て行く方角へと向ける
城下街ではない方角
(この方角だと、国の境目にある村か・・)
進めば、湖の情報はすぐに入る
老父の荷物運びを手伝っていた
途中で牛の怪我を看た
こどもと遊んだ
などなど
呆れるほど、足跡を残す湖に笑いが零れる
(・・・久しいな、童の時を思い出させる・・・まるで鬼ごっこだ)
「どこまで逃げられるか、見物だな・・・」
(湖一人ならば、ほどなく捕獲だろうが・・・あやつらが共にいれば・・・)
「いい暇つぶしになる」
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戻って、上杉一行は・・・
「明智と石田が武装で城を出た?」
「そうだ。さっき、安土城下に向かおうとしたところで、知らせが入った。おそらくこちらに気づいて向かってきている」
幸村と佐助の会話が、湖の耳にも入る
(光秀さんと、三成君が・・・)
「気づいて向かってくるなら解るが、武装とはな」
「しかも小隊付きだ」
幸村のつぶやきに、今度は信玄が返す
「は・・・?小隊・・・なんだって、そんな大々的に・・・」
「湖だろうな」
「え・・・?」
信玄に、名を呼ばれ
謙信の前に囲われている湖が声を上げた
「・・・推測だけど、湖さんの使っている抜け道がバレたんだと思う。たぶん、俺が用意したことも」
佐助が、湖に答えた
「だからって・・・」
「おそらく、タイミング悪く俺たちが此処に来ている事も情報が入って・・・最悪、湖さんの連れ去り事件になってるんじゃ無いかな・・・」
「連れ去り・・・って・・・っ、私、自分の用事で出てきただけで、今日だってたまたま皆と会っただけだよ」
(嘘、もし、そんな誤解を受けてたら・・・謙信さまたちが・・)