第18章 秘密の抜け道(裏:謙信、信長)
「湖は、何を照れている。以前、春日山城にその身を留めた時に「謙信の側室」と帰る間際に伝えただろう?」
「あ・・・」
それを聞き、湖は自分の身に残された謙信のキスマークを思い出してしまった
首後ろ、背、内股・・・多々散っていた赤い花のような痕
湖は、顔を片手で顔を囲い俯く
(無意識に思い出さないようにしていたんだ・・・謙信さまに付けられた痕のこと・・・)
「どうした?」
いまだ向かい合ったまま、謙信に腕を捕まれている湖はその顔を見ないままビクリと身を揺らす
「前の・・あの~~~っ・・・あれは、大変だったんですからっ・・・!!」
湖の様子に信玄は、ククッと笑いを含むと、幸村に声を掛け外に出て行こうとする
「信玄、貴様どこにいく」
「天女の着物、すごく似合っているが・・・それで出歩くのは目立つだろう。町娘に見えるような着物、それに袴も探してくるとする」
そう言い残し、信玄は幸村とともに部屋を出て行った
その間、幸村が「あれって何のことですか?」と信玄に聞いているのが聞える
その声が遠のくと、謙信は湖の腕から手を外し、彼女の頬に手を添えた
「春日山城へ来る気は無いか」
ドキリと、跳ねる心臓
このまま身体を飛び出して言ってしまうんじゃないか、この心音が謙信に聞えているでは無いか・・・そう考えてしまう湖の額に柔らかい物が触れる
「え・・・」
目を向ければ、ごく間近に謙信の顔
「別に、側室になれとは言わん・・・その身を我が城に置かぬかと聞いて居る」
(そくしつ・・・春日山城・・・謙信さまの・・・?)
眉間に皺が寄る
涙目で顔を染める湖
口は一文字のように閉じ、その表情の答えは何か
ぼたぼたと、次から次へとあふれ出てくる涙
「あ・・え・・・なんで・・・」
湖も何で涙が出てくるのか解らなかった
「・・・泣くほど嫌か」
「あッ・・ちが・・」
湖が声を発したのと同時に、ドタドタと複数の足音が響き
二人は入り口の方へ顔を向けた
「謙信様!すぐに此処を出ます!」
(え・・・)
佐助の声がすると、次に幸村や信玄の顔も見えた
「あの戯け、この場で戦でも始めるつもりか」
信玄が眉をしかめ、湖に白い羽織を寄越した