第18章 秘密の抜け道(裏:謙信、信長)
湖は、着物を着ると右足を引きずりながら戸口を開く
すると、その隣の壁に寄りかかるように待っていた謙信が目を開く
そして有無を言わさず、湖を抱えると部屋に向かって歩き出した
「け、謙信さま・・・」
「苦情は受け付けん」
「あ・・いえ・・・」
何か言いたそうな湖を抱えて謙信は三人の待つ部屋に戻った
「お。早かったな?」
信玄が、謙信と湖を見て声を掛けた
「なにがだ」
「久々の逢瀬なんだ。口説き文句の一つも言ってるかと思ったが・・・戻ってきただけのようだな」
「し、信玄さまッ・・・」
謙信は、特に返答せずに佐助の前に湖を置くとその場を離れ酒を飲みはじめた
「さて、湖さん。足見せて」
佐助に言われるまま、座ったその場に足を伸ばし右足首をみれば、そこは腫れ上がってふくれていた
「あ・・・割とひどい?」
「二週間・・・くらいだろうね」
(にしゅう・・・かん・・・あ、無理。あのひとたち相手に隠し通す自信ない・・)
さぁと、顔色が悪くなる湖
「さ、すけくん・・・もう少し・・・」
「早めに見積もって二週間だよ、湖さん」
(う、早目で二週間…長いよ…)
「湖」
「っ・・・」
呼ばれた方を見れば、謙信がこちらを見て酒を飲んている
「なんで一人で出てきていた?」
「・・・えっと、偶然あった子に乗馬を教える約束をして・・・でも、場所も城下から遠いし、きっと了承もらえないと思って、黙って抜け道使って出てきてました」
「やつらは、お前の事をしっていたのか」
謙信のいう「やつら」とは、馬貸しの一家だろうと湖は思った
「・・・いいえ。言ってません」
「この辺は、安土城からは離れている。だれに襲われても文句は言えない場所になるぞ」
「・・・はい・・・」
(おっしゃる通りです・・・)
謙信のいうことはごもっとも
ただ、湖も約束は破れないと決めた信念がある
「まぁ、たまたま通り掛かってよかったじゃないか。湖にまた出会えたし、怪我だけで済んで」
「あ、はい!その、信玄さま、幸村。久しぶりです!助けて頂いてありがとうございました!」