第18章 秘密の抜け道(裏:謙信、信長)
「佐助のやつ・・・余計な事を・・・」
幸村が呟くと同時に、
「俺がどうかしたのか?」
と、後ろから声が掛かった
振り向けば、そこには佐助と謙信がいた
謙信は、湖の姿を見るなり眉を潜めた
「っ湖さん!・・・どうしたの、その格好」
佐助が、湖の近くまで馬を近づける
着ていた桃色の着物も袴も砂埃で汚れ、頬にもその埃が見られる
「佐助君、謙信さま・・・」
それにも構わず、湖は、頬を染めて二人をみて喜びの表情を見せた
「えっと、ちょっと・・・無茶したかな?」
「ちょっとじゃねー、かなりだ」
湖の返答にすかさず、幸村が割って入る
「暴れ馬を制そうとして振り落とされた・・・ってところかな」
信玄は、佐助と謙信に解るように伝えた
「ちょ、信玄さま!」
黙って居て欲しかった湖は、いたたまれない気持ちになる
「湖さん・・・」
佐助が、自分の馬を降りて湖の身体をチェックしはじめた
そして、右足首に手を掛けると、湖の体がこわばった
「・・・どこか、休める場所に入りましょう」
と、謙信に声を掛ける
「湖さんは、俺の馬に」
「え、いいよ!佐助君、汚れちゃうし、ゆっくりなら馬に乗れるよ」
怪我してても・・・と続けようとしたところで、湖の腰に手が回りその身を引かれる
「わっ・・・!!」
「怪我人が文句を言うな」
「け、謙信さま・・・」
湖は、謙信に抱えられるように乗せられた
湖の乗っていた馬は佐助に手綱を引かれ、近場の宿に五人は向かった
着けばそのまま湯へ直行させられた湖
片足を庇うように汚れを落とし出れば、湯上がりには真新しい着物が用意されているのだ
秋らしい赤のグラデーションに裾に散る小花、金地の入った帯
まるで、どこかのお姫様が着ているような上等な着物に思えた
「・・・これ・・・着て良いのかな」
「問題無い。もとより、お前の為に仕立ててあった着物だ」
戸口の外からの声
「け、謙信さま?」
ビクリと身を寄せ、驚くが声の主にすぐに気づき安堵した
「さっさと着ろ」
「あ・・はい・・・あの・・・」
「なんだ」
「・・・ありがとうございます」
「・・・」