第18章 秘密の抜け道(裏:謙信、信長)
「そうそう、上手だよ」
「お姉ちゃん!出来た!俺、乗れたよ!!っわぁ・・!」
「あっ!だ、だめだよ・・っ急に大声出したら、馬だってびっくりするよ」
桃色の着物に紺の袴姿の湖は、小さな男の子と馬に乗っていた
湖は、この数日
安土の端に位置するような村に来ていた
厩舎(馬小屋)にいる馬の調子を確認するのに、遠出で走っている最中にあった男の子
両親は仕事で構う暇も無く、自分も馬に乗れるようになって手助けしたいんだと言う
それを聞いた湖が、自ら指南役を買って出た
もちろん、男の子の両親には挨拶に行った
彼の家は、馬貸しをしており、両親はその仕事に追われている
朝餉を済ませた後、こっそりと城を抜け出て此処に来ては、馬の世話に乗馬の指南
夕餉に間に合うように帰り、湯殿で身体を洗い流してから城の皆と会う
この二日間は、誰にも疑われず見つからずですんだが・・・
(今朝・・・朝餉の時に、政宗から言われちゃったんだよね・・・「何、隠してる」って・・・絶対、バレる・・・こっそり城を出て、こんな所まで来てたなんて知れたら・・・秀吉さんに怒られる)
過保護な武将達は、湖の一人遠出を許してはくれない
最近になって、ようやく城で世話している馬を走らせることは許可を貰った
別に窮屈ではない
むしろ、そこまで自分を気に掛けてくれていることに感謝しているし、申し訳無くなることもある
(今日で終わりにしなきゃね)
「しんた君、上手になったよ。あとは慌てなきゃ大丈夫」
「うん・・・姉ちゃん、湖姉ちゃん、ありがとな」
共に馬に跨がり、手綱を取らせていた少年が湖の方を振り向きにっかりと歯を見せ笑う
「よしっ!じゃあ、一人で乗ってみようか!」
「っお、おう!」
湖は、馬から下りた
はじめは、横に寄り添い徐々に距離を取る
そして、最後は男の子一人で馬に乗らせた
彼は、家が馬貸しということもあり、馬には手慣れていた
ただ、まだこども
乗馬となれば、高さも増し、広い馬の背を挟む足もなく、怖さがあった
それを取りのぞいてやれば、もう乗れたのだ
一人で乗り出した少年は、もう自在に馬を操っていた
それを見ていた両親、湖は、顔を見合わせて笑った