第17章 かごの中の鳥(裏:政宗)
「・・・政宗・・・?」
「結局、どうあがいたって幸せなんてもんは、自分の手で掴まなきゃ幸せとは、感じないんじゃないか?」
(自分の手で掴む・・)
「あいつらは、あいつらの幸せを手にしたんだろ。お前があれこれ考えても、結末が変わるわけでもないし、あいつらの幸せを理解出来るわけでもない」
(・・・そうだ・・・人によって感じる幸せが違う)
「確かに・・・お前なら、どんなに俺が落ちようが「生きろ」って言いそうだな」
ふっと政宗から笑みが零れる
「・・・政宗だって、もし私が一緒に連れていってって願っても「生きろ」って言って残していくでしょ」
「さぁな」
政宗は、立ち上がるのに膝を立てると湖の腕をつかみ一緒に引き上げる
「だが、俺は俺の大志を成し遂げるまで死なねぇ。もし何かあってもお前が危険な目に遭う前に、俺が助けにいってやる・・・だから、あいつらのようになることはない」
引き上げられ、板張りに足を下ろした湖は「そうだね」とはかなげに笑って見せる
「なんだ?まだ不安か?」
「・・・不安・・・そうかも」
(不安だ・・・私は、この時代の人間じゃ無い。生きていくだけで精一杯。でも、時間が私を連れ戻しに来るかも知れない・・・そんな不安が、政宗と思いが通じてから出てきた・・・)
「・・・もし、もしも、私が消えても・・・政宗は、私を覚えていてくれる?」
(・・・万一、私が現代に戻ってしまっても・・・)
鼻先が急に摘ままれ、湖は声も上げられずに驚いた
驚いて政宗を見上げれば、眉をしかめ軽く睨まれている
「ま、まひゃむ・・ね?」
「誰が消えるって?俺が、お前を離すはずないだろ」
摘ままれた鼻先が離されると、湖の身体が持ち上がる
「生まれたからには楽しむべきだ。命ある限り、自分自身の信条に恥じない生き方をすべきだ・・・そう以前言ったことがあるな」
「・・・うん」
「なら、「もしも」とか考えずに、今を生きろ。湖」
「っ…、うん」
「良し」
湖の顔に少しだけ明るい笑みが戻ると、政宗はその頭をグリグリと撫でる
「痛いよ、政宗っ」
「お前に元気がなきゃ、気になる・・・ましてや、他の男の事で頭を悩ませるなんて、冗談やめろ」
「男・・?え、エルマーさんのこと?でも、それはハンナさんと・っ」