第16章 かごの中の鳥
震えながら目を閉じ声を絞り出す湖
がぎっん・・・
金属と金属のぶつかる音がした
湖は、はっとして顔を上げると目の前にはよく知った背中があった
「政宗・・・っ」
政宗の刀が、エルマーの刀を折っていた
『っち、』
エルマーは、ヤスフェの腹に蹴りを入れその身体を離すと、政宗に向かって別の刀で応戦する
「やるじゃねーかっ・・面白い!」
戦い方の違うエルマーの太刀筋に、政宗は好奇心をくすぐられたかのごとく応戦する
湖は、身体をよろけさせながらヤスフェに近づく
ぴくりともしない大きな身体
だが、呼吸はある
刀傷が無数にある上、先ほどの打撲
気を失ったのだろう
ガギッン・・ギッ・・
少し離れた場所で、政宗とエルマーが対峙する
「湖様っ!」
声が聞えて振り向けば、そこには三成、信長、光秀の三人が姿を現した
「っ・・・みなさん・・・」
三成は、湖の側に駆け寄り
信長と光秀は、政宗と対峙するエルマーを見ていた
「残りは、あの男だけか・・・」
「っ、信長様っ・・違います・・・っ!」
「・・・どういう意味だ・・」
湖は、ヤスフェに助けられたこと
彼はこの件にかかわっていないことと、自分が助けられたことを話し
エルマーについても、本当の黒幕はもう一人の男だったことを伝えた
「彼は・・・彼は、正気じゃありません・・・おそらく・・・」
その時、ガダンッ!!という大きな音がし、目を向ければ
政宗がエルマーを弾き飛ばしたのか、エルマーが壁に身体を打ち付けていた
『ハンナっ!!・・・その男達から離れろっ!!』
「っ・・」
エルマーの声に、湖が身を揺らす
政宗は、なんだ?と湖を横目で確認した
「・・・彼には、私がハンナさんに見えています。たぶん、幽閉された彼女を助け出そうとしているんです・・・」
湖は、エルマーを見ずに信長を見てそう言った
「・・・狂ったか・・」
「だが、やったことには変わりは無い・・」
信長の後に続き、光秀も答える
「・・・少し・・・少しだけ、彼と話をさせて下さい」
(さっきまで、怖かった。震えてた・・・・でも、皆が側に居てくれれば・・・大丈夫・・・)