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【イケメン戦国】私と猫と

第16章 かごの中の鳥


『っ、私はハンナさんじゃない』
『君は、ハンナだよ・・・いや、そうなる・・僕とここから出て、ハンナになって』

懇願するような目

(・・・嘘)

ネジが噛み合わない歯車のように
人が狂っていく始まりを見ているようだ

『違うっ』

ぶんぶんと首を振り、後ずさりする
裸足の足に小石が刺さる

(逃げなきゃ・・・信長さま達が来るまで。きっと、すぐ来てくれるっ)

後ろを向いて、走り出す湖

『っハンナ、止まって…』
『いい加減にしろっ!』

どぉん・・・

硝煙の匂いに、湖が振り向けば
年配の男が銃を落とし、代わりにその手で赤く染まる胸を押さえていた

『きっ・・貴様・・・っ』
『そうだ。あんたには、借りがまだあったな・・俺にくれた傷、同じ所に付けてやるよ』

そう言い、彼は慌て逃げだそうとする男の背に小刀を突き立てそのまま下にと引いた
断末魔の叫びと共に、赤い血液が飛び散る
エルマーの顔にも、血がつく
彼は、それを拭い拭くと湖に手を伸ばした

『ハンナ、もう安心して。大丈夫、君は自由だよ』

(・・・壊れた・・・壊れている・・・)

エルマーから視線を外せずにいると、小刻みに震えが始まってしまう

『どうしたの?もう、もう君を離さないよ・・・ハンナ』

薄く笑う口元、涙を浮かべる瞳
綺麗な悪魔が、近づいてくる

『違うっよ・・・私は、』

あと数歩というところで、エルマーの身体が止まった
ヤスフェだ
彼は、エルマーを湖に近づけまいと、怪我をした身体を引きづってエルマーの腰にしがみついていた

『っ、離せ!』

小刀の柄で殴る
そのたびに、すでに傷ついている体から血が流れた
それでもヤスフェは手を離さなかった
必死に、逃げろと目で訴えている

『だ、だめっ!止めて!!』

震える身体をどうにか止めようとしながら、エルマーに向かって叫ぶ
すると、その手がぴたりと止まる

『あぁ・・・君は優しい人だ・・・ハンナ、君が望むなら、俺は何でもするよ』

エルマーの声を耳に入れながら、ヤスフェに離れるように視線をおくるが、彼はエルマーを離さない

『・・・待ってって。今、君を抱きしめるから・・・これを処分してから・・っ!』

持っていた刀を返し、刃をヤスフェの頭を目がけてふり落とす

『っ・・やめてっ!!!』
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