第16章 かごの中の鳥
翌朝を迎えても、猫のままの湖
準備は秀吉が済ませ、鈴は三成の懐へ
「三成、一枚は羽織をすぐに使えるように出しておけ。湖がいつ戻っても大丈夫なように」
「承知しています。秀吉様」
「三成、鈴を俺に貸せ」
「・・・やめてください。あんたの早馬に乗せて鈴が途中で落ちたらどうするんですか・・・癪だけど、この中では三成の馬が安全だ」
「お褒め頂ありがとうございます。家康様」
「その笑顔・・・向けるの止めてくれない・・・」
「俺の馬でもかわらんだろう」
「光秀、お前・・・懐の短銃と鈴を一緒にする気か?」
「貴様ら、そろそろ行くぞ」
口々に鈴の取り合いをする武将を横目に、信長が先に出ていく
「信長様っ!!お気を付けて!!」
秀吉が、叫ぶと同時に
光秀、政宗もそれに続いて出て行った
「では、秀吉様。行って参ります」
「おう。気をつけろよ。湖の事も、頼んだぞ」
「承知しております」
そして三成も、4頭と4人プラス1匹は堺に向かって早朝旅だった
「信長様、早馬で堺まで向かいますか」
「今から向かえば、夕刻には着くな。光秀は、俺と来い。政宗は三成と、鈴の様子次第で着いてこい」
「「「はっ」」」
結局、堺にはまだ明るい内に4人とも到着し港に近い宿をとった
そして、小腹が空いた頃・・・
「あの・・・ここ・・・どこでしょうか・・・??」
部屋の隅で羽織を頭から被り、くるまったまま動かない湖が尋ねてくる
部屋には、政宗と信長が居た
三成、光秀は情報収集と状況を確認するため宿を出た
残った政宗が、冷えた茶を運び持ってくると足もとにじゃれついてきた鈴
その頭に一つ湯飲みが落ちた
そして、湯を頭から浴びた鈴が鳴き声を上げると共に、湖の姿へとかわっていたのだ
目の前に居るのは、見知った顔だが、今いる場所は知らない場所
裸体の身体をどうにか隠そうとすると、信長に頭から羽織を掛けられ・・・
混乱する湖から出た第一声がこれだった
「此処は、堺。南蛮船の停泊する港だ」
そう言いながら、政宗が荷包みを湖に渡す
「秀吉が、用意したものだ。着物を着ろよ」