第16章 かごの中の鳥
湖は政宗の手に乗ったイヤリングに手を伸ばす
自然に、ゆっくりと
それは皆が目にしていたのに、誰も制する事が出来なかった
「っ…」
まるで、その間喋ることも動くことも禁じられたように
「・・・っおい・・」
ようやく光秀が声を掛けた時、湖はイヤリングを自分の耳に付け終えていた
光秀が声を出したのと同時に、先ほどと似たような冷たい空気が通り過ぎる
「湖」
信長が声を掛けると、湖は信長を見つめスックと立ち上がる
「しばらく・・・この身体をお借りします」
「何を言っている・・・貴様・・・湖では無いな・・・」
信長が目を細め睨む先には、湖
「私には、やらなければならないことがあります」
振り返って出て行こうとする湖
信長は組んでいた足を立て着物をはらうとその手を伸ばし、湖の片腕を掴んだ
そして、乱暴に自分の方へ引き寄せると耳からイヤリングを外す
「の、信長様?!」
秀吉が慌てて声を出した
信長は構わず、イヤリングを外した湖の顎に手を掛け、顔を上げさせ上からその表情を確認する
「あ・・・あれ?どうされたんですか??」
「・・・湖」
「は、はい」
何が起ったのかと、目を白黒させる湖を見て
その身体を解放すると、手に持っていたイヤリングを光秀に渡す
「これは、貴様が管理しろ」
「かしこまりました」
イヤリングを受け取った光秀は、湖を見てため息を零した
それは、他にも数人
「??」
「・・・湖様、たった今、ご自分が言われたことを覚えていらっしゃいますか?」
首を傾げる湖に、三成が尋ねる
「今?」
「あの装飾品を耳にはめられた事は、覚えていますか?」
三成が指すのは、あの赤いイヤリング
(え・・・いやいや、さっきのお化けイヤリングを・・??)
「む、無理っ!だって、幽霊・・・」
「そうですよね」
「??三成くん?」
聞き終える前に、返答する三成
彼は、軽くため息を付いてから湖を見た
「幽霊という不確かな存在を拝見するのも、そしてその幽霊に取り憑かれた人間を見たのも初めてなので、ちゃんとご説明できる自信がありませんが・・・さきほど・・・」
「へ?」