第16章 かごの中の鳥
ぱぁぁっと、まるで花でも咲いたような笑顔を見せる湖
そして、その表情に早まる鼓動をどうにか平静に保とうとする三成
結局、湖は一度目を通したいといい彼から本を貸して貰って部屋で読んでみることにした
三成が去った後、さっそく一冊目の本の出だしを読めば、それは物語のようだった
友好を気づいた隣国同士が敵対関係になり、その一国の姫が敵国との間に生まれた子どもで次第に姫に対する王宮内の態度が悪化していく
とうとう幽閉されてしまった姫には結婚直前の公爵がいたが、当然二人は引き裂かれてしまう
一方、王達の些細な喧嘩から発展した争いを裏から操って商売をもくろむ影が
一年たち状況は変わらず、公爵は姫の解放を願い続け地位を剥奪され姿を消す
そしてまた一年後、行商として働く公爵が裏の糸を断ち切り、やがて国同士のもめ事も収まって、姫が解放された
だが、姫は既に死去
公爵への一通の手紙を残して、この世を去ってしまっていた
『どうか、幸せに。私の愛したあなたが、幸せであるように・・・』
序盤だけにするつもりが、読みふけり最後まで一気に読んでしまった湖
気づけば、空はあかね色に染まっていた
「はぁー・・・」
本を膝に置き、いつのまにか零れ流れていた涙を手で拭く
(・・・ハンナ・・・お姫様の名前か・・・悲しい物語だった。あれ?そういえば、この本だけ・・・なんだか妙に綺麗・・・)
「湖、また寝てるのか?」
表紙を見て居た湖が声に気づき顔を上げれば、政宗が襖を開き入ってくる
「お前、起きてるなら返事・・・おい・・・どうした?」
無造作に湖の近くまで寄ってくると、身をしゃがませ湖の頬に手を当てた
そこには、頬を伝う涙があるのだ
政宗の真剣な表情に、何事かと首を傾げる湖
だが、そんなものにお構いなしの政宗は、涙に唇を近づけるとそれを舐め取る
「っ・・・!」
政宗のいきなりの動作に、思考が追いつかず小さく身を揺らした湖の目を再度覗き込む
もう少しで唇が触れそうな距離で
「なんで泣いてる」
(泣いてる?・・・あ・・・)
どきどきと、音を立てる胸を押さえながら政宗が言っている意味を理解した
「ご、誤解しないで・・・!三成くんに借りた本を読んで泣いただけ!」