第16章 かごの中の鳥
「この歌は、あの人たちは知ってる曲?」
「ううん・・・もっとずっと先の歌だと思うから、知らないと思う」
家康に答えた後で、エルマー達の事に気づいた湖
エルマーの方を振り向けば彼は、にこりと微笑み拍手をして見せた
『信長様から、歌姫だと聞いておりましたが・・・本当にすばらしい歌声でした。あの歌は湖が?』
『えっと、父に教えて貰った曲です』
『・・・そうですか、お父様が・・・失礼ですが、お父様は?』
『・・・元気ですが・・・今は、会えないんです・・・ちょっと事情があって、かなり遠い所にいるので』
そう気まずそうに答えれば、なぜか彼の口角が一瞬上がった
(?)
そう見えた
だが、次の瞬間には表情が変わっており、労りのように眼差しを向けている
『なにか事情があるようですね、すみません』
『・・・いえ』
(あれ・・・気のせいかな?)
昼餉時刻に行われた宴は、彼らが退出すると火が消えたように終わり、三成と光秀が入れ替わりのように部屋に入ってくる
「どうだった?」
「今のところ、この周辺では消息を絶ったなどの話は確認出来なかった」
「彼らの宿も拝見しましたが、不審なものは見当たりませんでした」
秀吉の問いかけに、光秀と三成が答える
それを聞いた信長は、にやりと不敵な笑みを浮かべた
「そう簡単には尻尾を出すまい」
「安土では、大人しく様子を見ているのかも知れないな」
「・・・でも・・・」
政宗の後に、口を開いた家康は湖を見た
「え?」
急に向かれた湖は、驚きの声を出す
「湖には、興味がありそうでしたよ」
「ああ。そうだな」
「気をつけろよ、湖」
秀吉にポンと頭を叩かれ、うんうんと頷く湖を政宗が覗きみる
「お前・・・「でも、あの人悪い人じゃなさそう」とか思ってんだろ・・・」
「っ・・・な、なんで解るの??」
軽く叩いていた秀吉の手に重みが増し、グリグリと頭を撫でられる
「ひ、秀吉さん、痛いよ!髪、ぐちゃぐちゃになるッ・・・」
「おーまーえーはー・・・っ」
「秀吉、あきらめろ。湖の呑気はなおらん」
光秀が横から湖を攫うように引き寄せ、乱れた髪を整えていく