第16章 かごの中の鳥
「して、湖・・・貴様、この者達の言葉は理解出来るのか?」
「え・・・あ、はい」
(英語ってことだよね・・・)
「だいたいの事は・・・」
ちらりと、三人の方を見ればうち二人は少し顔色を変えていた
信長よりも年上であろう白人の男と、ずいぶんと体格の良い黒人、それと自分と同じような体格の白人の男、三名がその場に謁見に来たようだった
その内、一番小柄な男性が自分を見ていることに気づき、湖は小首を傾げた
(・・・なにかな・・・?)
『・・・姫様、恐れ入りますが・・・姫様はなぜ異国の言葉を操ることが出来るのでしょうか?』
ビクリと身を揺らす湖
(・・・確かに、この時代に英語なんてぺらぺら話していたら怪しまれるかも・・・でも・・・)
『私の血縁者に、西洋の方がいるのです。なので、言葉はその方に教えられました』
(正直に言おう・・・嘘ついたって、あとで誤魔化すのとか・・・私は出来ないし)
そう返答すれば、一番年上かと思う男の表情が曇った
『そうでしたか。失礼な質問をしてすみません』
『あ・・・いえ。気にされないでください・・・あの、私は・・』
『湖姫様ですね。先ほど信長様よりお伺いしました。私は、商人で布教師のエルマーと申します』
『エルマー・・・よろしくお願いいたします』
湖は、相手の名前を言った後、丁寧に頭を下げて微笑んだ
エルマーと名乗った男は、それを見て意外そうな表情を見せ、次に柔らかい微笑みを返した
「ノ・・ノブナガサマニハ、コンカイノタイザイキョカヲイタダ・・」
「良い。そなたの言葉で話せ・・・湖、お前が通訳をしろ」
おそらく、三人の中でリーダーであろう年配者の話を遮り、扇で湖を指名した信長
湖は、戸惑いながらも彼の話を通訳して信長達に伝えた
「えっと・・・胡椒と、砂糖と、生糸・・・」
湖が、聞き取り、通訳し
謁見は滞りなく終わった
三人が下がれば、部屋は顔なじみの武将だけ
湖は、疲れたように畳に手をつく
「お疲れ様でした。湖様」
三成が背中を労るようになでる