第16章 かごの中の鳥
「失礼します」
謁見の間に、襖の外から声が掛かる
「来たか・・・入れ」
その声に応えた信長
開かれた襖の方を見る人は、信長、家康、三成の他
日本人とは異なる人種、白人二人と黒人一人だ
「申し訳ありません、信長様」
一礼し、室内に入る秀吉の腕の中には、綺麗な着物に身を包んだ湖の姿があった
「なんだ・・・まだ起きぬか」
止まった会話の中、秀吉から湖を受け取るとその膝に乗せ、再度向かい合う
「ソノカタハ?」
「こちらは、この城の姫です」
向かい合った者に、三成が答えた
その横に秀吉も座る
ぼそぼそと異国の言葉が聞えた
白人二人が、顔を見合わせ何かを話す
その内容は、外国語で聞き取ることは出来なかった
秀吉はあからさまに怪訝な表情を見せる
そんな中、信長に抱かれている湖がぴくりと反応を見せたのは、信長しか気づかなかった
「・・・」
信長が、湖を見ればその瞳が薄ら開かれ、三人の会話を見ている様子だ
そして、今までその場に聞えなかった声が発せられる
『No, wrong・・・』
その声に、家康、三成、秀吉
そして謁見に来た三人も驚き振り向けば、気だるそうに起きた湖がじっと三人を見て言葉を続けた
『私は、信長さまの妻ではないです』
湖が、そう答えれば・・・
『・・・っ!貴方は・・・』
『我々の言葉を話すのですか・・・』
と、返答がかえってくる
(・・・??)
寝起きの回らない頭に知らない人の顔
(あれ・・・何で英語・・・??)
「湖」
頭上から聞える声に振り向けば、信長の顔が鼻先にあった
「っえ・・・?!」
(の、信長さま・・・!)
そして、またも自分が信長の膝の上にいることに気づく
しかも、ずいぶん綺麗な着物まで着て
(な、何??!!え・・・昨日の夜・・・で、今は朝??え・・・着替えは?っていうか、今何してるの??)
困惑する湖を信長は、横に下ろすと
湖が見た見知らぬ面子の三人に、湖を「織田家縁の姫」だと紹介した
「湖様・・・」
前を向けば、三成と家康、それに秀吉も座っている
三成に名前を呼ばれ、ひとまずは挨拶を済ませた湖だったが、正直頭は混乱したままだった