第16章 かごの中の鳥
「今日は、外からの客が来る。その場に湖を置く」
信長の言っているのは、本日予定された謁見のことだ
「それは・・・もうまもなくですが・・」
「あぁ。先に、三成と家康を連れて行く。お前は、湖を起こしてから来い」
「はっ・・・あ・・え?お、御館様っ・・・」
「湖には・・・それらしく見えるよう着物を着せろ」
そう言うと、信長は天主を出て行ってしまった
残されたのは、湖を抱える秀吉
「・・・はぁ----」
秀吉の深いため息
抱えた湖は、まだ夢の世界のようだ
(さて・・・どう起こせばいいか・・・)
一方、天主を出た信長はすぐに三成と家康に会いそのまま謁見の間へと向かう
「・・・湖を・・・ですか?」
「あぁ」
「本日の謁見はキリシタンの方々でしたね」
「湖を置いておけば、暇つぶしになる」
謁見が始まって、少ししてようやくなんとか目を覚ましだした湖に、秀吉は有無を言わさず着付けをしていく
「ぅはよう・・ございます・・・」
「湖、もう寝るな!!・・・こらっ、ちゃんと立ってろ」
「・・ふぁい・・・」
(・・・眠い・・・まだ寝てたい・・・)
「こらっ!湖っ!!お前、いい加減にしないと・・・」
「・・・・・・はーぃ・・・」
「・・・勘弁してくれ・・・」
はぁーと、先ほどより更に深いため息を付く秀吉
どうにか、着物を着させれば、そこには幼顔の姫君が居た
「待ってたら謁見が終わる・・・仕方ない・・・」
そう言い、腹を決めたように湖を抱え謁見の間に向かう秀吉に、着物を着せる手伝いをしていていた女中達が心配そうな表情を見せる
「湖様、昨夜はひどく怯えられて・・・いつもに増して寝起きが悪いのはそのせいかと思うんです」
「あぁ、知ってる・・・だが、寝起きが悪いにも程がある」
なんとも答えられない女中の顔は苦笑だった