第16章 かごの中の鳥
(あれ・・・、そういえば・・・あの人、英語を話して・・・)
そう、ぼんやりと・・・
幽霊では無いと解って安心したのもあり、急激に眠気に襲われる
手にイヤリングを持って呆けている湖に二人が気づく
(なんて言ってた・・・二人に・・・話さなきゃ・・・)
「湖、明日また話を聞く。もう寝・・・」
信長が、言い切る前に
彼の身体に重みが掛かった
「・・・童だな」
「くく・・・、どうやら湖は幽霊など不確かな物が苦手なようですね」
「そのようだな」
「生きている人間の方が、よっぽど恐ろしいと思うがな」
頭の重みを膝に移動させ、信長と光秀はまた酒を飲み始める
今夜の刺客と、明日来る珍客について話をしながら
「御館様、失礼します」
陽が昇り、城に出向いた秀吉がはじめに尋ねるのは天主
信長に朝の挨拶と、共に昨夜の騒動について伺う為に顔を出した
「秀吉か・・・入れ」
「はっ・・失礼し・・・・・・湖?」
信長は書籍を片手に、どうやら秀吉が声を掛けるまでそれを読んでいるようだった
そして、その膝元には、すーすーと穏やかな寝息を立てる湖の姿があった
「信長様・・・これは?」
「昨夜の件は、もう耳にはいっているだろう。そのまま、ここで寝入った」
「寝入ったって・・・では、信長様は・・・」
「いや。よく寝た・・・湖の寝息につられたか、昨夜はよく寝た」
秀吉が向けた先にあるのは、皺一つ無い褥
「そのまま寝られたのですか」
はぁとため息を零すと、湖を移動させようと信長に一礼するとその身体を抱える
すると、ぽとりと足もとに物が落ちる音が・・・
「ん?」
「これだ」
落ちた物を摘まみ、信長が秀吉に渡す
「昨夜、湖が侵入者から贈られたものだ。日本国の物ではない」
「・・・鳥の模様・・・家紋のようなものか?」
「さぁな」
「ん・・・」
信長と秀吉が話をしていると、秀吉に抱きかかえられた湖が動く
その様子に気づくと、秀吉は一度膝を付き、湖を起そうとする
「湖、起きたか?」
「・・・」
だが、反応は無い
「いつか政宗が言っていたな。起こしても起きないだとか・・・」
「確かに、湖を起こすのは苦労しますが・・・」