第16章 かごの中の鳥
「さっさと話せ」
「っ!」
話せと言われれば、何かを思い出したのか、頬の色が治り白くなっていく
「青くなったり、赤くなったり、白くなったり・・・ずいぶん急がし奴だな」
光秀は、その様子をくくっと笑ってみている
「み、光秀さん?!」
そんな光秀の存在を湖は今になって気づくのだ
「何か、恐ろしいものでもみたか?」
それに気をとめず、光秀は湖に質問した
すると、湖は言いずらそうにしながら頷く
「それは、お前の耳に付いているそれと関係あるのか?」
信長が、湖の耳たぶを触った
「え?耳・・・」
自分でも手を伸ばせば、片耳に装飾品が付いているようだった
するりとそれを摘まみ取る
灯に照らされたそれは、赤い球体に鳥の模様が入ったイヤリングだ
自分の手の平にあるそれを見ている湖は、青ざめながら先ほど合ったことをそのまま話はじめる
イヤリングを見たままで
「幽霊を見ました。これは、たぶん・・・幽霊に付けられました・・・ごめんなさい、大きな声出してっ・・でも、おばけだと思って・・・怖くて、叫んでしまって・・・」
信長の膝の上で縮こまる湖は、手をぎゅうと握って震える
当人は、それには気づいていないようだ
そして、信長もそれをあえて指摘したりはしなかった
「光秀」
「はっ。先ほど、城内に何者かが侵入した形跡があると報告を受けました。おそらく湖が見たのはそのものでしょう・・・ですが・・・」
光秀の話を聞くと、湖は「え・・・?」と視線を光秀に向けた
「侵入者が、贈ったものか・・・」
信長は、湖の手の平にあったイヤリングを摘まみそれを見ると、ふん・・・と鼻で笑った
「物はいい物のようだ」
そう言い、イヤリングを湖の手に戻す
「じゃあ、幽霊じゃ・・・」
「ないな」
光秀が、当然だという笑みで答えると、湖は握り閉めていた手から力が抜け・・・
「よ、よかったぁ」
「俺は、幽霊より侵入者の方が危険だと思うがな」
ふっと笑みを零し光秀は、湖を見ていた
そんな視線に気づかないまま、湖は手に乗るイヤリングを見る
信長がいい物だというのであれば、相当なものなのだろうな・・・とぼんやり湖は思った