第15章 攫われた姫 (裏:政宗、謙信)
「謙信さま」
「・・・なんだ」
その温もりを感じながら名を呼べば、あの時のように返事をしてくれる謙信
ふふっと、笑みを零す湖を謙信は眼を細めながら見ていた
「あ・・・そう言えば・・・私、佐助くんに連れてこられませんでしたか?」
不意に、湖が思い出し謙信に質問を始めた
「そうだ」
「あれ?佐助くんと、幸村は?」
「あの二人は、今はいない」
二人は、謙信に鈴を預けると戻りの時間を教えて長屋を出て行った
詳しく教える必要はない
そう考え手短に答える謙信に対して、湖も追求はしない
「そうですか・・・あ、じゃあ、謙信さまに・・・こないだは、みっともない姿を見せてすいません。あのあと、すぐにあれ(発情期)は治って・・・謙信さまたちにお詫びをしたくて、探していたんです」
「・・・・・・」
「あの・・・っ!」
唇にふわりと伝わる体温
驚き、きゅうと目を閉じる湖
その温もりは離れたかと思えば、またすぐに伝わり、角度をかえ、時折ちろりと唇を舐め取られ・・・
わずかに開いた隙間から、舌を差し込まれて、口内に自分以外の体温を感じる
「ん・・っ」
ちゅぅ・・・ちゅ・・
謙信の胸に手を当て、わずかに腰を引こうとすればそれを阻まれ、さらに自分の方へと引かれる身体
舌で舌を追いたてられ、離れることのないその温もりに湖の熱が上がってくる
「ぅン・・ッ」
湖の瞳が潤んできた頃を見計らったように、離れた唇
糸をひくように互いの唇をつなげる液を、謙信は湖の唇を親指で撫で切った
「はぁ、は・・・」
息が上がったまま、謙信を見上げれば、その表情は灯に灯され色香を放っているように見える
「知っている」
「・・・え?」
「お前が探していたのも、独眼竜に連れ戻されていたのも・・・見ていたからな」
(独眼竜・・・政宗の事だ・・・)
「あいつと鉢合わせては、お前とゆっくりできそうも無いのでな・・・時間を置いて、攫ってきた」
「っ・・・攫うって・・・」
「安心しろ、無理に春日山城へと連れ戻そうとしているわけでは無い。朝には、気に食わんが帰してやる」
「・・・謙信さま」
「だが・・・お前が望むのなら、すぐにでも我が城へ連れて帰るがな・・・」