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【イケメン戦国】私と猫と

第15章 攫われた姫 (裏:政宗、謙信)


次に湖の意識が戻ったのは、それからまもなく

「っ・・・」

目の前には、探していた謙信が鼻先の距離にいる

「・・・湖」
「け・・んしん、さま・・・?」

まぶしさの中から、現れた謙信の顔
目がくらむような感覚は、鈴から戻った直後に必ずあること

(私、さっき佐助くんに・・・)

少し前の事を思い出しながら、頭を働かせていく
目の前には、謙信
脇に手を入れられ立ち膝、その身体を謙信が支えるようにしている
その背には寝衣を身体に掛けられていた

(この体制は・・・っ)

謙信に口づけされ、元に戻ったのだと感づくと、湖の頬に赤みが差した
そして同時に、寝衣が肩にしか掛かっていないことに気づき焦る湖

「す、すみません!着物を・・っ」

言い終わる前に、支えられていた手をゆっくり外され、湖は急ぎ寝衣を合わせて腰紐を縛った
そして、それを終えるとキョロキョロとあたりを見回す
暗い室内に灯ったやわらかな蝋の光

(宿・・・ではなさそう・・・)

「・・・幸村が新たに探した場所だ」

湖の考えを読んだように、謙信がその疑問に答える

「では・・・長屋ですか?」
「そうだ」

見回すのを止めて、謙信に向き直れば・・・
左右異なる色を持つ謙信の瞳が、湖を捕らえている

(っ・・・謙信さまのこの瞳・・・やっぱりドキドキするよ・・・)

その瞳に捕らえられ、思い出すのは春日山城での出来事
記憶の無い湖を、みんなが受け止め甘やかされたように過ごした一時
短い期間だったが、忘れることの出来ない記憶だ
なにより、自分の世話を甲斐甲斐しくしてくれた謙信
熱にうなされながらも、謙信が側にいてくれたことをよく覚えている

「謙信さま・・・」

熱を持った瞳で謙信を見上げれば、彼は薄く笑って短い返事をした
その笑みに、あの時間を思い出したかのように微笑み返す湖

(傷が癒えても記憶の戻らない私・・・時折、なぜか泣きたくなると・・・必ず側にいてくれた)

春日山城での、甘い記憶
その甘やかしてくれた手に触れたくなる

「・・触れてもいいですか?」
「好きにしろ」

足を崩し、片足をたてて座る謙信の直ぐ横に来ると
その膝に乗っていた片手を、湖は両手で握るように持ち上げた
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