第15章 攫われた姫 (裏:政宗、謙信)
「下ろす必要があるのか」
湖は光秀の肩に手を掛け、極力距離を取ろうと腕を突っ張り
政宗は、光秀の片腕を握るようにし離さない
「み、光秀さんっ・・・下ろして・・・」
「どうしてだ」
「どうしてじゃねー!湖を下ろせ!」
「・・・お前、もう治ってるんじゃないか・・・湖」
ぎゃーぎゃー騒ぐ湖の耳に、光秀の言葉が入る
そして、ピタリと声も抵抗も止むと、湖はじっと光秀と政宗の顔を見た
(あれ・・・?)
「湖?」
政宗が、光秀の腕を掴んだままで湖を覗き込む
「・・・治ったみたい・・・」
ぽつりと湖の声が聞えた
光秀の体温、政宗との距離
心臓が壊れそうな程、高鳴ったり、息苦しくなったり、火照ったり・・・あのどうしようもない疼きが無くなっている
「発情期・・・終わったぁ・・・」
ほっと胸を撫で下ろすかのように、肩の力を抜くと、光秀は持ち上げていた湖の身体を下に下ろした
「痣になったぞ・・・政宗・・・」
着物から覗く腕を見ながら光秀は政宗に文句を言う
「自業自得だ。それより、湖・・・本当に治ったのか?」
「うんっ!大丈夫・・・!」
政宗に振り向く湖の表情は、いつもの明るい笑みだ
「そうか・・・」
「そうなの!」
ふふっと、嬉しそうに笑いを零しながら
湖は、両手を広げて政宗と光秀、二人の頭を抱きかかえるように抱きしめた
「戻ったよー!」
「「っ・・・」」
その行動には、二人とも呆気を取られたかのように固まりされるがままになってしまった
湖はといえば、あのコントロール出来ない疼きから解放され心底嬉しいという感情が外にだだ漏れだ
あまりに嬉しすぎて自分の格好を忘れるくらいだ
「「・・・湖」」
「うん?」
にこにこと二人を見る
「お前・・・何か忘れてるだろう」
「・・・奇遇だな・・・同じ事を言おうと思った」
「・・・ん?」
ぷに・・・
政宗に脇を、光秀に腹を摘ままれ
「ひやぁ・・っ?!」
湖は、突拍子もなく間抜けな声を上げた