第15章 攫われた姫 (裏:政宗、謙信)
すこしの間の後、謙信が刀を収めた
「・・・つまらん・・・お前でもつけぬハッタリがあるのだな・・・」
光秀から視線をそらすと
「興が逸れた・・・佐助、幸村、行くぞ」
政宗の横を素通りする三人
だが、政宗は刀をしまわない
だからと言って、三人を追うわけでもなく・・・
「どうした?」
拳銃を懐に収めた光秀が尋ねれば、政宗は眉間に深い皺を刻んだまま息をついた
「・・・二度目はない」
「なにがだ?」
言いたいことが解っているような顔をしながら光秀はわざと尋ね返す
「湖を・・・嘘でも的にするような事は二度とするな」
「・・・的にしたつもりはないが・・・わかった」
政宗は、光秀が引き金を引くつもりでは無い事は理解していた
だが、向けられた銃口が鈴を正確に狙っているのを見た時
敵意が光秀に向けられた
(こいつが・・・湖を撃つわけはないが・・・)
「さて・・・」
光秀が、銃口を向けた鈴の方へと足を進める
緑の着物の下の膨らみは、銃口を向けた時からぴたりと止まっていた
着物で包むように、鈴を持ち上げその顔を出すと、光秀は同じ目線まで鈴を持ち上げた
「湖、お前も真に受けるな」
猫は、無言で大きな瞳で光秀を見ている
「この辺は、こないだあの僧の件で被害がでた近くだ。また騒ぎがあれば、人が離れていくかも知れない。穏便に済ませる必要がある」
それを聞くと猫の耳がぴくりと動く
にゃぁ
と一鳴きすると、光秀の鼻先をざらりと舐めた
「光秀が理由を話して聞かせる・・・珍しい光景だな」
政宗が、その様子を珍しげに見ている
「湖・・・悪かった」
「・・・っ、光秀っ・・」
次の瞬間、湖は自分の・・・鈴の口に柔らかい感触を感じた
それと同時に、自分の身体が大きくなるのを感じる
「っ、きゃぁっ・・・!!」
光秀に抱えられた状態で、足で空を蹴りながら湖は申し訳無い程度に掛かっていた着物で急ぎ身体を隠す
「光秀っ」
湖を抱えていた光秀の腕を掴む政宗
そんな二人の間で湖は、パニックになりそうな勢いだった
「ち、っ・・・近いっ・・・!!!」
「光秀、下ろせ」