第15章 攫われた姫 (裏:政宗、謙信)
幸村が飛び込んできたと同時に、戸口からキラリと光る何かが勢いよく振られる
「幸!」
それが幸村に振り落とされる寸前、佐助が幸村の肩を引く
切っ先が僅かにかすめた幸村の着物が斬られた
(っ、刀・・)
振り向いた謙信の背中を視界に捕らえながら、戸口で振られたものを見ればそれは刀だった
だが、火照った身体はこわばりのせず、余計に熱を上げていくようだった
湖は、もう立ち上がることも出来ないように、ただ床の冷たさに身を預けている
(・・・もう・・駄目・・)
触れられても居ないのに、疼く身体
意識を手放そうとした瞬間に、政宗と光秀の着物を見た気がした
「湖っ!!」
刀を握った政宗は、幸村達と対峙したまま家の奥を見れば、床に倒れ込む湖の姿
緑色の男物の着物を羽織って息もあらそうに見えた
ガッキン・・・
刀のぶつかり合う音と共に、奧にいた謙信がこちらに向かってくる
「幸村、その獲物こちらに寄越せ」
「何、言ってるんですか!?っ、」
「よそ見してんじゃねーよ」
ガッ
次に視界の端に捕らえたのは、湖ではなく
着物の下でもぞもぞ動く小さなものだった
(・・・鈴に戻ったか)
「っ、よそ見はお互い様だろうがっ!」
一瞬の隙を見て、幸村が政宗を押し変えす
「鈴になったか」
一方、入り口でずっと様子を見ていた光秀は、奧の小さな動きを見た後に拳銃を懐から出した
「ここは安土城下の外れ、だが、城下には変わりない。あまり暴れたくは無いのでな・・・ここから出てもらおうか」
「・・・知ったことか」
だが、聞き耳持たない謙信はスラリと刀を構えるだけだ
「・・・やれやれ。じゃあ、こうしよう」
すると光秀は、視界の端で刀を交合わせる政宗と幸村、佐助を確認したのち、銃口を奧の鈴に向ける
「・・・何の真似だ」
「光秀!」
不快な顔を見せた謙信と、光秀を見て怒濤を上げる政宗
幸村と、佐助もその銃口の先を捕らえ、刀の動きが鈍る
「すぐに出ていないなら、あれを射貫こうと思う」
「何やってる!あれは、鈴・・」
「知ってる。悪いが俺は、お前達ほどアレに執着していない。この場を収めるなら安いものだ」
光秀がニヤリと薄く笑って見せると、政宗をはじめその場の四人がそれぞれ表情を変えた