第15章 攫われた姫 (裏:政宗、謙信)
謙信が手を伸ばすも、ビクリと揺れる肩にその手を止める
「ちが・・います・・」
吐息混じりに、首を振り答える湖
「・・・cat in heat・・・鈴の・・」
頭が回らない感じで答える湖は辛そうに眉をしかめ俯く
「in heat・・・って」
それを聞いた佐助が困惑した表情を見せた
「なんだ、佐助」
「・・・猫の発情期です」
「発情期?って、あの発情期か」
「その発情期以外何があるんだ、幸」
湖は、もう座っていることもままならなくなり、力つきたように横になった
「湖」
謙信が近づこうとすると、腕を上げて「近づかないで」と制する湖
謙信は、その状態に少しずついらついてきていた
「佐助、どうゆうことだ」
「・・・この様子から見るに、鈴の発情期が本来なるはずの鈴ではなく、湖さんに影響しているようですね・・・合ってる?湖さん」
佐助の声に、頷きで答える湖
「え・・じゃあ、いま・・こいつ・・」
「・・・異性に対して過剰な反応を示すって事だと思う」
ずいぶん言葉を濁して佐助が幸村の質問に答えると、幸村はこれまでに無いほど顔を赤らめ「お、俺は出てくる」と言い飛び出してしまう
「湖さん、鈴には戻れない?」
「・・呼んで・・るんだけど・・・答えない・・・」
「・・・どうしてほしい」
「ッ・・謙信さま」
「っ・・・」
今それを自分に聞くのかと困惑して表情の湖
謙信は、距離を取ったまま湖の前に進むと、その瞳を捕らえ返答を待った
眉間に皺を寄せ、吐息を吐く湖はそこらの遊女より何倍もの艶を放っている
真っ白な布地に落ちた赤い椿のように
その姿は、一度目に入れば外せなくなる
(幸村は飛び出していって正解だったよ。俺だって動けるなら出て行きたい)
佐助は、湖の姿から目を外せなくなっていた
「・・ッ・・しい・・です」
湖が続けて何かを言おうとした際、また謙信が湖の頬に手を当てようとしたその際に、扉が大きな音を立てて開いた
「っ謙信様!佐助!!見つかった!!」
幸村が室内に飛び込んで、三人の意識が逸れた
「っ!」
「伊達と明智だ!」