第15章 攫われた姫 (裏:政宗、謙信)
聞き覚えのある音にすぐにその正体がわかる
見ればそこには鈴の姿があった
「鈴」
しゃがんで、手を差し出せば猫は身をすり寄せてくる
「・・・もしかして、湖さん?」
にゃぁ
どちらとも判断できない返答に、佐助は苦笑いを見せた
「参ったな。久しぶりに安土に来たから知らせにきたんだけど・・・」
そんな独り言を行っていると、部屋に近づく人の気配を感じる
(・・・警護か・・・)
天井に戻ろうとすると、鈴が自分について来ようとしているのに気づく
「ごめん、連れて行けない」
そう言い佐助は、「また今度」と姿を消した
城外に出た佐助は、幸村の待つ長屋に向かおうとしたが、小さな気配に気づいてしまう
「・・・っ鈴」
鈴が着いてきてしまったのだ
「参ったな・・・もう人が起き出す時間だな・・・明日に連れ帰るか・・・」
すると嬉しそうに佐助に飛びつく鈴
反対に佐助は、表情には出さないものの
(これは、誘拐になるのだろうか・・・)
「あれ・・・?髪飾りは?」
一抹の不安を抱えて、長屋に向かっていた
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*現在の時間軸に戻ります*
●鈴になって六日
昼を過ぎた頃、食事の時間には決まって台所を訪れていた鈴が姿を見せないと、秀吉に下女からの報告が入る
「鈴ちゃんの姿が見えないんです。いつも決まってこのくらいには来てたんですけど、三成様のお部屋でしょうか?」
「・・・解った。鈴の事は探しておく」
秀吉は、嫌な予感を抱えながら三成の部屋に
三成は書簡を見ながら、襖が開いたことにも気づかずにいた
ぐるりと部屋を見回しても鈴は居ない
「三成」
「・・・」
返答のない三成の書簡に手を差し出すと、それで気づいた三成が眼鏡を外しながら秀吉に返事をした
「すみません、呼ばれましたか?」
「鈴を見てないか?」
「いえ・・・見ておりませんが・・・どうかされましたか?」
「朝から、姿を見た奴が居ない」
「・・・・・・」
すくっと立ち上がった三成と秀吉は部屋を出た
「心当たりを探して参ります」
「俺は天主の上を見てくる」