第15章 攫われた姫 (裏:政宗、謙信)
二人ははっとして、襖をみれば湖の影がビクビクと揺れているのが解った
「・・・悪い」
「解りました。信長様達にも理由は説明しておきます・・・湖様、鈴様の姿に戻れますか?」
「・・・うん・・・今なら・・呼べば出てきてくれると思う・・・」
「では、早々にお戻りください」
三成が言うと同時に襖に映っていた影が消えた
政宗が襖を開ければ、そこには「にゃぁ」と鳴く鈴の姿があった
それを抱き上げると喉元を撫でる
「お前にも悪いことしたな。照月はすぐに連れ帰る。今度、また遊んでやってくれ」
ごろごろと気持ちよさそうに喉を鳴らす鈴に、政宗は苦笑していた
「理由は解った。今夜は、すぐに照月を連れて帰る」
三成は、湖の座っていたであろう場所に手を当てれば、畳が湿っているのに気づく
(汗・・・)
「三成?」
「はい・・・鈴様の事は任せてください」
三成は政宗から鈴を受け取ると丁寧に抱いた
「明日にでも、信長様に説明しましょう」
その夜、大人しく三成の部屋で寝食を食べた鈴はひととき寝に落ち、三成が寝た頃に湖の部屋へと戻って、再び寝始めた
翌朝、三成から話を聞くため武将達が広間へと集まってきていた
「・・・と、言うことです」
「つくづく面白い娘だ」
三成の報告を受けた信長が面白そうに笑う
「ならば、あの軍議の時間は湖にとって拷問であっただろうな」
「光秀さん、あんたは悪趣味です」
「して、鈴はどうした?」
「私は、昨晩寝る前に見たのが最後です」
「まあ良い。しばらくは自由にさせておく」
「「「「はっ」」」」
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■軍議より数時間前の出来事にさかのぼり
「湖さん・・・寝てる?」
しゅとん・・・
男は天井から舞い降りると部屋の異変に気づく
時刻は朝方、とは言ってもまだ寝ている時間
最近、安土城の湖の部屋の周りの警護が厳しくなっていた
佐助は、致し方なくこの時間に忍び込んだのだが・・・
(褥がない、湖さんの気配を感じない?)
ぐるりと見回すと、足下にするりと何かが寄ってくる
一瞬驚き、身を揺らす
ちりりん・・