第15章 攫われた姫 (裏:政宗、謙信)
襖から政宗の手が外れると、湖はその襖により掛かるように息を吐いた
襖を隔てた廊下に湖の吐息が聞える
いつもより甘く色香を漂わせるような吐息
その場にドカリと政宗が座り込む
三成もまた襖の前に座り、湖の説明を待った
「・・・あのね・・・今、鈴が・・・」
言いずらそうに言葉を濁らせながら説明し始める湖
「・・・発情期なの」
((発情期・・・??))
「鈴様がですか?それは、その・・・こどもを作る行為を・・・という意味で合っていますか?」
「合っ・・・てます・・・三成くん、説明しないで・・・」
半泣きな声に、政宗が「あぁ」と先ほどの照月を見て鈴が固まった理由を考えた
「・・・にしては、鈴の反応はおかしいだろう?照月見て怒ってるようだったぞ」
「それには理由があって・・・鈴の反応は発情期に入る前の反応なの。その一時は、雄を近づけなくなる子もいるの。個々によって違うんだけど・・鈴はそうなのね」
「ですが、湖様は先ほど発情期だと」
三成の言葉に、襖に映る湖の影が揺れる
「っ・・・どういう訳か・・・鈴はその状態が続いてて・・・かわりに私がそう・・な・・」
後半は、口ごもったように声が聞えない
「ちゃんと聞えるように言え、湖」
「・・・まさか・・・湖様が、その・・・発情期だと?」
「はぁ?三成、何言ってんだ?人間にそんなもの・・・」
「違いますか?湖様」
三成の問いかけに一拍おくように湖が返答を見せた
「うん・・・」
「うんって、お前・・・」
「湖様が気づいたのは、六日前の軍議の時・・・ですか?」
「・・・うん」
三成がため息を零す
「なるほど。それで様子がおかしかったのですね」
「猫の発情期は、長くて8、9日くらいなの。だから、それまでは鈴で居たいの。鈴なら、人相手なら普段通りだから」
「ったく、人のままで部屋に籠もってれば良いだろうが・・・」
「ひ、人ごとだと思ってっっ!!今だって、こうやって襖隔てて喋ってっても、大変なんだからっ!!私にとっては一大事なの・・・!」
「「!!」」